研究課題/領域番号 |
24540361
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 雄介 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20261547)
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キーワード | 超流動 / 臨界速度 / 量子渦 / ソリトン / 動的密度ゆらぎ / 位相欠陥 / ジョセフソン効果 |
研究概要 |
2次元トーラス状の超流動体に障害物ポテンシャルがある場合の臨界速度近傍における超流動体の性質をグロス・ピタエフスキー方程式とボゴリューボフ方程式を用いて解析した。その結果、渦生成を伴なう超流動の崩壊現象の前駆現象として動的密度ゆらぎが増大すること、有限サイズの系でも励起エネルギーの最小値がゼロになることを見出した。渦生成を伴なう超流動臨界速度近傍でのゆらぎをとらえた初めての研究であり、またボゴリューボフ方程式を解いた初めての例であるという点で重要な成果だと考えている。また臨界速度近傍でのグロスピタエフスキー方程式の適用可能性についてもquantum depletion を求め、その方程式の妥当性を確かめた初めての成果である. ジョセフソン型の障害物を持つ超流動体の臨界速度近傍における密度ゆらぎを数値的解析的に求めた。この場合には渦のかわりにソリトンが生成され超流動性は失われることが分かっている。渦生成を伴なう臨界速度近傍での成果と合わせて、位相欠陥の生成を伴なう超流動臨界速度近傍では動的密度ゆらぎの増大が起こることを見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渦生成を伴なう超流動崩壊現象における臨界速度近傍でのゆらぎをとらえることはこれまで困難であった。そのような状況でのボゴリューボフ方程式を数値的に解くことは困難であったからである。本年度は2次元トーラス状の超流動体に障害物ポテンシャルが存在する場合にボゴリューボフ方程式を解くことに成功し、密度ゆらぎのスペクトルを得ることができた。最も困難なプロセスを乗り越えたという点で、進捗状況は順調であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は超流動崩壊にともなう密度ゆらぎの増大と粘性抵抗力の関係を定式化し、数値的に検証する予定である。超流動固体相のゆらぎのスペクトル関数の計算は数値計算上困難であることが分かったので、超流動液体相の計算に専念する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初科研費で支払う予定であった数式ソフトmathematica使用料を運営交付金で支払ったため余りが生じたのが理由であり、研究遂行上支障はなかった。 次年度の数式ソフト使用料として使用するか、現時点で新たに必要となった英文校閲料に充てるかのいずれかに用いる計画である。
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