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2012 年度 実施状況報告書

混合原子価を持つ新奇クロム酸化物の物質開発

研究課題

研究課題/領域番号 24540362
研究機関東京大学

研究代表者

礒部 正彦  東京大学, 物性研究所, 技術専門職員 (70396919)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード高圧合成 / 混合原子価化合物 / クロム酸化物 / A サイト秩序型ペロブスカイト型酸化物
研究概要

今年度は、これまでの高圧合成を用いた物質開発を継続しつつ、新たにA サイト秩序型ペロブスカイト型酸化物の物質開発を行った。高圧合成を用いて、これまでに報告されているCaCu3Cr4O12に加えて、新規にLaCu3Cr4O12, YCu3Cr4O12, BiCu3Cr4O12の高圧合成に成功した。まず、合成圧力を7.7GPaで固定し、温度を変えて合成を試みた。X線回折実験から、1100度では未反応物質がまだ見られ、逆に1300度では不純物が見られた。よって1200度が、今のところ最適であると考えられる。しかしながら、X線回折実験で単相であると見られた試料も、帯磁率の測定から、磁性不純物の痕跡が見られ、まだ純良試料とは言い難い。今後は合成圧力をもう少し上げて、合成することを検討している。しかしながら、帯磁率の測定から、新規に合成されたLaCu3Cr4O12, YCu3Cr4O12, BiCu3Cr4O12において、低温で相転移を兆候が観測された。試料の純良化して詳細な物性を調べたい。
またスピネル構造をもつ混合原子価クロム酸化物の新物質開発に関しては、今のところ、新規化合物の合成に成功していない。今後は、合成圧力の上げることも検討する。
ペロブスカイト構造をもつCr4+酸化物のフッ素置換効果も、CaCrO3においては、成功しなかった。他のペロブスカイト構造をもつクロム酸化物を検討してみたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3ヶ年計画の1年目は、おおむね順調に進展していると考えている。なぜなら、本研究の重要である、A サイト秩序型ペロブスカイト型酸化物の合成に、初年度で成功したからである。これらは、新規な化合物であり、さらには、低温で相転移の兆候があり、新奇な相転移を期待させる。詳細な物性を調べることにより、本研究課題の「混合原子価を持つ新奇クロム酸化物の物質開発」に一定の成果が得られると考えられる。
一方で、スピネル構造をもつ混合原子価クロム酸化物の開発、ペロブスカイト構造をもつCr4+酸化物のフッ素置換効果については、まだ成功しておらず、平成25年度以降の課題であるが、1年目としては、おおむね順調にいっていると考えられる。

今後の研究の推進方策

現時点で、合成に成功しているA サイト秩序型ペロブスカイト型酸化物の物性解明の為、帯磁率、電気伝導性、結晶構造の物性を測定し、低温での相転移の詳細を明らかにする。混合原子価をもつクロム酸化物である為、混合原子価バナジウム酸化物で、低温で見られる電荷秩序や、4価の鉄の酸化物において、低温で見られる電荷不均化や電荷移動などの新奇な相転移が期待される。しかしながら、少量の磁性不純物がまだ含まれており、これを取り除き、純良試料を得ることも重要であり、合成圧力を上げることで、磁性不純物を抑えられないか検討していく。また詳細な物性を調べるためには、単結晶は不可欠であり、高圧下での単結晶育成にも挑戦していく。さらには、置換効果も研究することにより、相転移の本質にも迫っていきたい。
一方で、スピネル構造をもつ混合原子価クロム酸化物の開発、ペロブスカイト構造をもつCr4+酸化物のフッ素置換効果については、今のところ成功していないので、合成圧力を上げたり、違う元素の組み合わせを試して、新規な化合物の合成を目指したい。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、約11万5千円の繰越があった。初年度ということもあり、発表等に使う旅費が、若干余った。その分25年度に積極的に発表等行っていきたいと考えている。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Synthesis, Structure, and Electromagnetic Properties of Manganese Hollandite, KxMn8O162012

    • 著者名/発表者名
      T. Kuwabara, M. Isobe, H. Gotou, T. Yagi, D. Nishio-Hamane, Y. Ueda
    • 雑誌名

      J. Phys. Soc. Jpn.

      巻: 81 ページ: 104701-1-5

    • DOI

      10.1143/JPSJ.81.104701

    • 査読あり
  • [雑誌論文] μ+SR study on ferromagnetic hollandite K2Cr8O16 and Rb2Cr8O162012

    • 著者名/発表者名
      J. Sugiyama, H. Nozaki, M. Mansson, K. Prsa, D. Andreica, A. Amato, M. Isobe, Y. Ueda
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 85 ページ: 214407-1-8

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.85.214407

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Observation of Structural Change in the Novel Ferromagnetic Metal-Insulator Transition of K2Cr8O162012

    • 著者名/発表者名
      A. Nakao, Y. Yamaki, H. Nakao, Y. Murakami, K. Hasagawa, M. Isobe, Y. Ueda
    • 雑誌名

      J. Phys. Soc. Jpn.

      巻: 81 ページ: 054710-1-6

    • DOI

      10.1143/JPSJ.81.054710

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ferromagnetic hollandite K2Cr8O162012

    • 著者名/発表者名
      J. Sugiyamaa, H. Nozakia, M. Manssonb, K. Prsa, A. Amato, M. Isobe, Y. Ueda
    • 雑誌名

      Physics Procedia

      巻: 30 ページ: 186-189

    • DOI

      10.1016/j.phpro.2012.04.069

    • 査読あり
  • [学会発表] ホーランダイト型クロム酸化物K2Cr8O16の金属-絶縁体転移2013

    • 著者名/発表者名
      礒部正彦, 中尾朗子, 中尾裕則, 上田寛
    • 学会等名
      日本化学会第93春季年会
    • 発表場所
      立命館大学
    • 年月日
      20130322-20130325
  • [学会発表] ホランダイト型遷移金属酸化物の金属 ー絶縁体転移-高圧合成を用いた物質開発-2012

    • 著者名/発表者名
      礒部正彦
    • 学会等名
      日本物理学会 四国支部 学術講演会
    • 発表場所
      徳島大学
    • 年月日
      20121228-20121228
    • 招待講演
  • [学会発表] ホランダイト型クロム酸化物2012

    • 著者名/発表者名
      礒部正彦
    • 学会等名
      科研費基盤A研究会「バナジウム酸化物、クロム酸化物研究の総括と新物質開発に向けて」
    • 発表場所
      ホテル ラフォーレ伊東
    • 年月日
      20121217-20121218
    • 招待講演
  • [学会発表] ホーランダイト型クロム酸化物K2Cr8O16の新奇な金属-絶縁体転移2012

    • 著者名/発表者名
      礒部正彦, 上田寛, 中尾朗子, 中尾裕則
    • 学会等名
      日本セラミックス協会第25回秋季シンポジウム
    • 発表場所
      名古屋工業大学
    • 年月日
      20120919-20120921

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公開日: 2014-07-24  

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