研究概要 |
100K近傍で非磁性低スピン(LS, S=0)から常磁性へスピン転移を起こすMott転移近傍物質LaCoO3は、転移後の磁性状態Co3+のスピン状態が未だ不明である。申請者等は、超強磁場磁化測定から、LaCoO3ではLSから高スピン (HS, S=2)に転移するCo3+(以後、CoI)とLSから中間スピン(IS、S=1)に転移するCo3+(以後,CoII)の2種類のCo3+が共存すること、即ちスピン相分離を提案した。本研究では、(A)元素置換をしたLaCoO3の強磁場磁化からCoIとCoIIの安定性を決める要因、(B)両者の空間的相関の2点を探り、LaCoO3で2種類 のCo3+が共存する機構を明らかにする。さらに(C)置換元素による局所的影響とその範囲から、置換元素導入により生ずる新たなスピン相を明らかにする。置換元素は、(i) 化学的圧力効果、 (ii)電荷導入、 (iii) Co-3dと希土類4fの混成、(iv) Co-3dと異種遷移金属元素の混成の(A)~(C)への効果を明らかにするように選定する。 本年度は、前年度に引き続き、M=Al, Ga, Rh, Irを導入した試料の強磁場磁化測定を行った。その結果、M=Alでは、CoIのLSからHSへの転移磁場が上昇すること、即ち、LS基底状態に対するHSのエネルギーが増大すること、M=Gaでは殆ど影響しないことが判明した。一方、M=Rh, Irで は転移磁場が減少すること、即ち磁性状態の励起エネルギーが減少すること、更に基底状態が磁性状態のCoの出現することが判明した。これらの振る舞いは、Sr導入で見られたスピンポーラロンによる振る舞いとは明らかに異なる。全体の傾向はMイオンの大きさによる化学的圧力効果で定性的には説明できることが解った。
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