研究課題/領域番号 |
24540365
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
浅井 吉蔵 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00109795)
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研究分担者 |
佐藤 桂輔 茨城工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (10418212)
小林 義彦 東京医科大学, 医学部, 講師 (60293122)
中村 仁 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (50313416)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スピン転移 / スピン相分離 / 強磁場磁化課程 / 強磁場磁歪 / 強磁場物性 / 強相関電子系 / ペロブスカイト / Co酸化物 |
研究実績の概要 |
ペロブスカイト型結晶構造を持つLaCoO3は温度によりスピン転移を起す物質として1950年代から広く研究されている。しかし、この物質のスピン転移が関係する諸物性を矛盾無く説明するには至っていない。本研究は、元素置換をしたLaCoO3の強磁場物性からCoのスピン状態の安定性を決める要因を明らかにし、既知の実験結果を矛盾無く説明することを含めて、LaCoO3のスピン状態と転移を解明することを目的とした。置換元素は、(i) 化学的圧力効果、(ii)電荷導入、 (iii) Co-3dと希土類4fの混成、(iv) Co-3dと異種遷移金属元素の3d、4d混成の効果を明らかにするように選定した。 本年度は昨年度までの実験結果を考察し、以下の結果を得た。 1)磁場誘起のスピン転移の解析からLaCoO3の温度誘起スピン転移について以下の描像を得た。Co3+イオンは最低温度で非磁性の低スピン状態にある。温度が30K程度に上昇すると、15%程度のCo3+が高スピン状態由来の磁性状態へ熱的に励起し(第1段の励起)、さらに温度が100K程度に上昇すると、低スピン状態に留まっていた残りのCo3+イオンは中間スピン状態へ励起する(第2段の励起)。100K近傍で実現される非一様な磁性スピン状態は、高スピン状態間の強い反発力に起因する。 2)元素置換効果から、第1段の励起温度を決める要因はCoイオンにおける結晶場と原子内交換相互作用の競合であり、第2段の励起温度を決める要因は高スピン状態間の反発力であること、又、ホール導入によりスピンポーラロンが形成され、スピン相分離が生じることを明らかにした。 3)強磁場中のLaCoO3の磁歪の解析結果は上記のモデルを強く支持する。 4)強磁場中のLaCoO3の縦磁歪は100K付近で強弾性を示すことから、磁場による双晶制御の可能性がある。
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