研究課題/領域番号 |
24540369
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 浩章 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90311737)
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研究分担者 |
鈴木 通人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (10596547)
有田 亮太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80332592)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重い電子系超伝導 / 隠れた秩序 / 第一原理計算 / 多極子秩序 |
研究概要 |
現在、相対論的第一原理計算から有効模型を構築する計算コードを切り口に、スピン・軌道・電子相関が絡み合う物理に関して、統一的に定量的計算を行っている。特に、本年度は、重い電子系における長年の未解決問題であるURu2Si2の隠れた秩序に重点をおいて研究を進めた。この物質は17.5Kにおいて比熱や電気抵抗に明確な相転移が観測されているにもかかわらず、磁気転移も構造転移も観測されず、隠れた秩序を称される。さらに、0.8Kでは異方的超伝導とも共存する。その発見以来四半世紀の時が経つが、未だ、その秩序変数が何であるか確定されておらず、つい最近でも LDA+DMFTに基づく16極子やスピンネマチックの可能性が提案されたばかりの非常にホットな話題である。我々は、以下の手順で、その秩序変数として、E-対称性をもつ32極子がもっともらしい事を示した。 (1) 第一原理計算に基づいて、ワニエ基底を構築し、有効模型(多軌道のアンダーソン格子模型)を求める。 (2) RPA+beyond(高次の補正)を用いて、磁気揺らぎの異方性、および、高次の多極子相関を評価する。 (3) 得られた揺らぎの構造から、隠れた秩序の秩序変数を特定し、平均場やLDA+U計算によって、秩序状態を定量的に解析する。 本年度は、この結果をいくつかの解説文献にまとめるとともに、もっと一般に磁気空間群の分類学を発展させた。さらに、同様の計算手法を用いて、最初の非従来型超伝導体CeCu2Si2の超伝導対称性に関する微視的な研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
URu2Si2の隠れた秩序状態での物理量の評価には予定より少し時間がかかっているが、一方で、CeCu2Si2など他の物質系への応用が進んでいる。このまま順調に進めば、実施計画を予定通り修了できる算段である。
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今後の研究の推進方策 |
URu2Si2に対する磁気空間群の論文、および、CeCu2Si2の超伝導に関する論文をまとめるとともに、現在の計算に動的平均場近似を取り入れて、重い電子状態の形成機構について議論して行く。同時に、他の重い電子超伝導体についての系統的研究を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の残額と合わせて、ハイスペックの計算サーバを購入、多軌道系の動的平均場近似を実行できる環境を整えていく予定である。
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