研究課題/領域番号 |
24540369
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 浩章 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90311737)
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研究分担者 |
鈴木 通人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (10596547)
有田 亮太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80332592)
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キーワード | 重い電子系超伝導 / 隠れた秩序 / 第一原理計算 / 多極子秩序 |
研究概要 |
現在、相対論的第一原理計算から有効模型を構築する計算コードを切り口に、スピン・軌道・電子相関が絡み合う物理に関して、統一的に定量的計算を行っている。前年度には、重い電子系における長年の未解決問題であるURu2Si2の隠れた秩序に重点をおいて研究を進めた。その結果、四半世紀の謎であるその秩序変数としてE-対称性をもつ32極子がもっともらしい事を発見した。その計算手順は、 (1) 第一原理計算に基づいて、ワニエ基底を構築し、有効模型(多軌道のアンダーソン格子模型)を求める。 (2) RPA+beyond(高次の補正)を用いて、磁気揺らぎの異方性、および、高次の多極子相関を評価する。 (3) 得られた揺らぎの構造から、もっともらしい秩序変数に対して、LDA+U法等でその安定性を調べる。 同様の手法は、非常に汎用性があり、様々な系の揺らぎを調べるための一般的な処方性を与える。(3)で得られた多極子揺らぎを媒介とした超伝導は重い電子系超伝導の本質であろう。本年度は、最初の非従来型超伝導体CeCu2Si2の超伝導対称性に関する微視的な研究を行った。その結果、期待されたd波超伝導よりも鉄系超伝導体で見られたs±波の超伝導が実現している可能性が高いという結果を得た。さらに、動的平均場法と組み合わせることでCe115系の超伝導と準粒子形成過程の密接な関係が明らかになった。 さらに、重い電子系や鉄系超伝導体に観測される量子臨界点付近での磁場侵入長の特異な振る舞いをそのフェルミ面の構造から半定量的に説明することにも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
URu2Si2の隠れた秩序状態での物理量の評価には予定より少し時間がかかっているが、一方で、CeCu2Si2やCe115系など他の物質系への応用が進んでいる。このまま順調に進めば、実施計画を予定通り修了できる算段である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたいくつかのテーマに関して論文をまとめるとともに、現在の計算に動的平均場近似を取り入れて、重い電子状態の形成機構について議論して行く。同時に、他の重い電子超伝導体についての系統的研究を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の所属異動に伴う作業のため、使用予定を先送りせざるを得ない状況にあったため。 合算した予算を再配分することになるが、使用計画に大きな変更はない。
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