研究課題
重い電子系化合物は,スピンと軌道が絡み合った多自由度系であり,その強い電子間相互作用によって新奇な秩序状態が出現する舞台となっているが,これまで,その複雑な電子構造を読み解いて,個々の物質の多様な物性を理解する事はほぼ不可能であると考えられてきた。しかし、当該グループの開発した方法論によれば,相対論的第一原理計算から低エネルギー有効模型を構築することができ,さらに,動的平均場近似や揺らぎ交換近似などの量子多体計算と組み合わせることで,その複雑な電子状態を読み解くことが可能になってきている。本研究プロジェクトにおいては,この方法論を発展させ,いくつかの重い電子系化合物に適用することで,これまでの謎を解決に導く糸口を得るとともに,非BCS超伝導に関する新たな知見を得ることができた。主たる研究成果として以下の5点が挙げられる。1. URu2Si2の遍歴的側面を明らかにし,隠れた秩序がE-対称性をもつ32極子である可能性,2. 初めてのd波超伝導体と考えられてきたCeCu2Si2の超伝導ギャップ関数が実はs±波である可能性が高いこと,3. CeCoIn5の反強磁性的揺らぎの構造を理解する上で,重い電子状態の形成機構が重要となること,4. スピン三重項超伝導体の代表例であるUPt3の超伝導ギャップ構造,5. その他,実験グループとの共同研究によって,鉄系超伝導体における量子臨界点の存在や軌道秩序の可能性などを議論した。いずれの研究も世界に先行した研究成果であり,今後のさらなる展開に興味がもたれる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 謝辞記載あり 13件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 84 ページ: 043705
10.7566/JPSJ.84.043705
Phys. Rev. Lett.
巻: 114 ページ: 147003
10.1103/PhysRevLett.114.147003
Phys. Rev. B
巻: 89 ページ: 045101
10.1103/PhysRevB.89.045101
巻: 112 ページ: 067002
10.1103/PhysRevLett.112.067002
巻: 112 ページ: 156404
10.1103/PhysRevLett.112.156404
Nature Commun.
巻: 5 ページ: 4188
10.1038/ncomms5188
Comptes Rendus Physique
巻: 15 ページ: 587-598
10.1016/j.crhy.2014.07.002
巻: 90 ページ: 125147
10.1103/PhysRevB.90.125147
巻: 90 ページ: 121111(R)
10.1103/PhysRevB.90.121111
巻: 90 ページ: 144517
10.1103/PhysRevB.90.144517
巻: 90 ページ: 184407
10.1103/PhysRevB.90.184407
Proc. Natl Acad. Sci.
巻: 111 ページ: 16309-16313
10.1073/pnas.1413477111
Phil. Mag.
巻: 94 ページ: 3747-3759
10.1080/14786435.2014.887861
Sci. Rep.
巻: 4 ページ: 7292
10.1038/srep07292