研究課題/領域番号 |
24540371
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北尾 真司 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00314295)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鉄系超伝導体 / メスバウアー分光 / 磁気秩序 / 核共鳴散乱 |
研究実績の概要 |
本研究は鉄系超伝導体中で最も単純な構造の”11系”超伝導体について、超伝導と密接な関係を持つ電子状態や複雑な磁気構造を、鉄とテルルの両面からのメスバウアー効果から明らかにすることを目的としている。今年度までに鉄テルルセレン化合物について同位体濃縮した純良試料の作成手法の確立に成功し、それを用いてほぼ計画どおりに鉄とテルルの双方のメスバウアー効果の実験を実施することができた。また実験結果の解析により、多くの新たな知見が得られており、本研究の目的をほぼ達成することができたと言える。新たに得られた重要な知見の主なものとしては、磁気転移を生じる鉄テルル化合物について、鉄の磁気秩序に伴い、テルルにおいても内部磁場が観測されることをテルルのメスバウアー効果から直接観測に成功し、テルルの電子状態が鉄の磁気秩序の大きな影響を受けていることの確証が得られたことが挙げられる。このことは”11系”化合物が単純な構造を持つにもかかわらず、複雑な磁気構造を持つメカニズムを解明する鍵となると考えられる。また、鉄とテルルのメスバウアー効果をそれぞれ強磁場中で行う実験や、単結晶試料を用いた放射光核共鳴前方散乱によるメスバウアーパラメータの詳細な測定などの予定された実験も実施済みである。これら実験データの解析において多くの重要な知見が得られており、今後の解析によってさらに詳細な議論を行うことが可能である。本研究により、鉄テルルセレン化合物の詳細な電子状態について、鉄とテルルの双方からの解明を行うことで、鉄系超伝導体で重要な問題となっている、磁性と超伝導との関連性についてのより詳細な議論に対して大きな貢献ができたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに本研究の目的についての研究はぼぼ順調に進展していると言え、ごく一部の実験が未実施となっている状況である。本研究の主な目的である鉄とテルルのメスバウアー効果の実験については、ほぼ予定通り実施が完了しているため、本研究の目的である鉄とテルルの双方からの解明という事項については、目的どおり多くの成果を得ることができたと言える。一方、本研究では放射光を用いた実験を想定しているが、一部の実験は実施できたものの、放射光のマシンタイムが想定された時間を確保できなかったなどの理由で、実施できなかった実験もある。しかしながら、放射光の実験においても目的の実験は十分達成しており、一部の挑戦的な実験を残すのみとなっていることから、本研究の達成度としてはほぼ順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた成果のうち、未発表の重要な成果については順次早急に報告を行う予定である。また本研究のうち、一部の挑戦的な実験については、次年度に実施が計画されており、本研究を踏まえた新たな知見が得られる見込みである。さらに本研究を発展させたいくつかの応用実験を進行中であり、さまざまな成果に進展しつつある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた一部の実験が次年度に実施されることになったため、実験に関する消耗品や旅費を次年度に使用することとなった。また次年度においても、本研究についての公表を行うため、学会参加費や学会旅費を次年度に使用することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に行うことが確定している実験について、実験にかかわる消耗品および旅費として使用する。また、次年度に公表する予定の、本研究についての研究成果の論文投稿料、英文校正費用、学会参加費、学会旅費として使用する。
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