研究課題
基盤研究(C)
希土類化合物RNiC2は,空間反転対称が無く,超伝導付近に電荷密度波が出現し,電荷密度波と磁気秩序が競合するという魅力ある系である。しかしこれまでは磁性に主として興味が集中し、次いでパリティの混成した超伝導などの報告がされ、徐々に興味を集めてきた。しかしながら、この物質では電荷密度波が一部の希土類元素(Sm)で発見された他はその有無が明らかになっていない。しかも輸送特性についてはほとんどわかっていなかった。これは、ひとえに、これまでのアーク炉のみによる結晶育成では、ごく一部の希土類元素のRNiC2しか単結晶が生成されなかったからである。この状況を打破すべく我々は、アーク炉だけではなく小型高温炉を購入し、二つの炉を組み合わせて二重封管法による結晶成長を開発した。その成果としてこれまでは、例えば良質な単結晶が作成できなかったPrなどについても単結晶の作成に成功した。更にはPrでは電荷密度波が存在する事も単結晶電気抵抗測定と単結晶X線回折実験の両方から、明らかにした。また、SmNiC2では、約150Kという比較的転移温度も高く、周期的な変調構造の振幅も大きい電荷密度波が、わずか数Tの磁場印加によって消滅するというきわめて稀な現象を発見し、Physical Review Bに論文を上梓した。
2: おおむね順調に進展している
1)研究対象物質SmNiC2が弱磁場下で電荷密度波が消失するという興味深い性質を明らかにした。2)RNiC2の単結晶作成方法の開発に成功した。3)実際にいくつかの希土類元素を用いてRNiC2の単結晶を作成した。4)作成した単結晶を用いて輸送特性や構造物性測定をおこない、新たな物質で電荷密度波を発見した。
1)開発したRNiC2の単結晶作成方法を用いて多くの希土類元素について単結晶成長をおこなう。2)作成した単結晶を用いて輸送特性や構造物性測定をおこない、電荷密度波の有無を明らかにする。3)RNiC2には磁気的な基底状態が異なる物質があるので、それらで単結晶を作成し、磁性と電荷密度波との相関をあきらかにする。
該当なし。
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Physical Review B85, 092402
巻: 85 ページ: 1-5
10.1103/PhysRevB.85.092402