研究概要 |
最近発見された近藤半導体CeT2Al10(T=Ru,Os,Fe)はT=Ru,Osにおいて奇妙な反強磁性秩序を示すことが明らかにされ、現在盛んに研究されている。我々のグループでは、広島大学黒岩グループとの共同研究としてSPring-8においてLnT2Al10の室温での結晶構造を詳細に調べ、結晶の骨格を形成するT-Alボンドのa,c方向のジグザグ鎖がこの系の物性を大きく支配していることを明らかにした。またランタノイド収縮からのCeにおけるずれが、a方向で最大であり、b方向のずれは非常に小さいことを発見した。これらの結果からc-f混成が異方性が存在し、a方向で最大であり、b方向では非常に小さいことを示していることが明らかになった。NMR測定から、転移温度以下でのCeのa方向の最近接のAl2サイトの内部磁場が他の4つのAlサイトに比べ異常に大きいことを発見し、これがa方向の強いc-f混成の結果であると結論した。また物性研・近藤らとの共同研究として強磁場磁化曲線を測定し、a方向の強いc-f混成が強いとして統一的に理解できることを示した。c-f混成の異方性に関する情報を得るため、a,b,c方向に電流を流し、その方向に磁場をかけた状態で電気抵抗の圧力依存性をしらべ、c-f混成の異方性がaが最大で、bが最小であることを示す結果を得た。CeRu2Al10の結晶場スキームがドイツのStrigariらにより決定されたのに伴い、異方的交換相互作用を導入した分子場計算を行うことにより、磁気的性質をよく再現することができた。また、a方向の磁化率の60K以下での計算からのずれの起源をa方向のc-f混成がこの温度以下でさらに成長し、TR0以下の奇妙な反強磁性秩序を引き起こしていることを提案した。
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