研究課題/領域番号 |
24540378
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
渡辺 真仁 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40334346)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 臨界価数ゆらぎ / 量子臨界現象 / 価数転移 / 価数クロスオーバー / 非フェルミ液体 / 重い電子系 / Ce化合物 / Yb化合物 |
研究概要 |
CeおよびYbの価数転移の量子臨界現象の性質を明らかにするため、f電子間の局所相関の効果を取り入れた上で、f電子と伝導電子の間の電荷移動のモード結合の理論的枠組みを構築した。具体的には、CeおよびYb系重い電子系を記述するミニマル模型としてf電子と伝導電子間のクーロン斥力を取り入れた拡張周期アンダーソン模型に基づいて、(1)1次の価数転移とその臨界終点からのびる価数クロスオーバー線の性質の解明、(2)価数転移の量子臨界点と磁気転移の量子臨界点の関係の解明、(3)理論と実験の比較、を行った。 上記(1)と(2)の結果は、複数のCeおよびYb系重い電子系物質で実現していると考えられる。実際、上記(3)の解析により、複数の物質とよく整合することがわかった。その一つとして、YbCu5-xAlxのxを2.0から0.0へと減少させると、Ybの価数が3価から減少するが、x=1.5付近で急激な減少を示すことが観測されており、Ybの価数クロスオーバーが生じていることが報告されていた(E. Bauer et al., Phys. Rev. B 56 (1997) 711)。この価数クロスオーバーが生じているx=1.5の低温において、帯磁率が温度の-2/3乗に比例し、電子比熱係数がlog発散を示す(C/T~-logT)という、既存のスピンゆらぎの量子臨界現象では説明ができない現象が出現することが問題となっていたが、x=1.5でYbの価数転移の臨界終点が絶対零度に比較的近い負の温度領域に位置しているとすれば、本研究で示した価数ゆらぎの量子臨界現象により自然に説明できることを指摘した。 このように、従来理解されてきた磁気臨界点のみならず、CeおよびYbの価数転移の量子臨界点が重要な役割を果たしていることが明らかとなったことは、重い電子系における新概念を提起したものとして、重要な意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
価数転移の量子臨界点の性質への理解が着実に進んでおり、磁気量子臨界点との関係についても理解が深まっている。本理論研究で統一的に説明ができる物質が複数の実験により次々と報告されつつあり、今後より一層広い普遍性が明らかになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の実施計画のとおり、価数転移の量子臨界点近傍における量子輸送現象の理論的解明に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
理論計算の実行と結果の解析に必要な、高性能ワークステーション1台を購入する計画である。理論研究の円滑な遂行のため関連する理論および実験研究者と議論を行うため、本年度に数回の国内出張を行うことを計画している。また、研究成果の発表のため国際会議への参加も行う予定である。
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