研究課題
非従来型の量子臨界現象を示す重い電子系金属のbeta-YbAlB4で観測された、磁化率が温度Tと磁場Bの比の4桁以上にわたって1つのスケーリング関数で表される異常な振る舞いについて、臨界価数ゆらぎの理論の観点から解析を行った。具体的には、Ybの価数ゆらぎの量子臨界現象を記述する拡張周期アンダーソン模型に、beta-YbAlB4の異方的c-f混成を取り入れた模型から出発して、磁場下での価数ゆらぎのモード結合方程式を導出して解析を行った。この理論的枠組みにより、ハミルトニアンのパラメータを入力することで価数ゆらぎのモード結合方程式の入力パラメータが自動的に定まるようになり、エネルギースケールの階層構造(伝導バンド幅>近藤温度>臨界価数ゆらぎの特徴的温度T0)が正しく記述され、実験の温度-磁場相図と理論相図との定量的比較が可能となった。その結果、Ybの価数転移の量子臨界点近傍で、臨界価数ゆらぎの特徴的温度T0が測定最低温度と同程度か、それより低い場合には、価数帯磁率および磁化率にT/Bスケーリングの振る舞いが4桁以上にわたって出現することを見出した。この機構によれば、f準位の混成バンド端へのfine tuningを要請しなくてもT/Bスケーリングの振る舞いが現れることが示される。これにより、beta-YbAlB4の各物理量(磁化率、電子比熱係数、電気抵抗率、核磁気緩和率)が示す非従来型の量子臨界現象とT/Bスケーリングの振る舞いがYbの臨界価数ゆらぎの理論により統一的に説明されることがわかった。また最近発見された、共通の非従来型の量子臨界現象を示す重い電子系準結晶Yb15Al34Au51と近似結晶について、Ybの臨界価数ゆらぎの理論により、両者とも共通の量子臨界性が出現可能であるが、前者の方が温度-圧力相図中で量子臨界領域が広いことを指摘した。
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