研究課題/領域番号 |
24540383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
桑原 英樹 上智大学, 理工学部, 教授 (90306986)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不純物置換効果 / 反強磁性体 / 遷移金属酸化物 / 磁場 / 相共存 / スピン / 軌道整列 / 結晶構造解析 |
研究概要 |
まず最初に、基底状態にA型反強磁性・x2-y2軌道秩序相を持つNd1-xSrxMnO3 (x = 0.55) 結晶におけるMnサイト不純物置換効果を検討し、以下の結果が得られた。不純物としてRuを選択しその置換量を増加させると、A型反強磁性・x2-y2軌道秩序相を不安定化すると同時に、強磁性相関の発達が見られた。Ruを10%置換することで全温度領域で強磁性金属的振る舞いを示すことが分かった。さらに同結晶のMnサイトをRuで5%だけ置換することによって、X線構造解析の温度変化からA型反強磁性・x2-y2軌道秩序相と強磁性・軌道無秩序相の2相共存状態(2相とも長距離秩序)が実現することが確認された。この2相共存の臨界状態を利用することにより150Kの比較的高い温度において、磁場印加によって約80%電気抵抗率が減少する巨大磁気抵抗効果(CMR効果)の発現が見られた。 また、擬2次元の結晶構造(Ruddlesden-Popper相)を持つMn酸化物のMnサイトに対してもRu置換効果を検討した。その結果、327型(Mn2重層)、214型(Mn1重層)の結晶構造を持つ物質に対してもRuを置換することで強磁性相関の発達が見られた。その際、低温域におけるスピングラス相の増大が見られた。214 型構造においては、反強磁性・3x2-r2/3y2-r2軌道秩序相を乱す効果が観測された。 最後にマルチフェロイック物質の不純物置換効果について基礎実験を開始した。まず最初に我々が発見したSr2CoSi2O7および、CaBaCo4O7について、不純物置換を行っていない母物質およびキャリアードープを施した物質系についてその誘電特性および磁性を精密に測定した。このデータを元に不純物置換による物性変化を議論していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた年次計画に沿ってほぼ計画通り進展している。年次計画の中心テーマと平行して走らせている発展的テーマも、その準備実験は着実に進捗しており、次年度以降に成果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って順調に研究が進展しているので、大きな研究計画の変更は行わず、前倒しで年次計画の次々年度の研究計画に含まれているマルチフェロイック物質やAサイト秩序型ペロブスカイト物質の不純物効果も積極的に研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は装置の定期メンテナンス等の修理代や、試料作製のための試薬、低温実験のためのヘリウムガス等の消耗品費に多くの費用が必要と見込んでいる。また試料の基礎物性評価のために研究協力者と共同実験を行ったり議論・打ち合わせをしたりするための旅費も予定している。
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