研究課題
本年度は、昨年度の巨大磁気抵抗効果を示すMn酸化物から対象物質をさらに新規物質へと発展・展開すべく、過去に我々の研究室で発見した磁気誘起電気分極を示すマルチフェロイック物質であるCaBaCo4O7に着目した。これまでの研究から、CaBaCo4O7結晶における磁気誘起電気分極は、二つの独立したメカニズムであるp-d hybridizationモデルとspin current モデルで説明できると考えられているが詳細はまだ明らかでない。そこで、本研究ではCaBaCo4O7に不純物置換した各種単結晶試料を作製し、その磁気誘電特性の変化を調べて、CaBaCo4O7におけるマルチフェロイック特性向上を目指した。具体的にはCaBaCo4O7結晶試料のCoサイトへのFe置換、Ca及びBaサイトへのSr置換を行い、磁気特性・誘電特性の変化を調べた。これら系統的な実験の結果、以下の知見が得られた。○CaBa(Co1-xFex)4O7 (0≦x≦0.25)結晶試料 において、x = 0.50 (%) でのフェリ磁性相転移温度、フェリ磁性と結合した誘電相転移温度の低下を観測した。また、1.56 (%) ≦ x において、これら磁気・誘電相転移の消失が確認された。○(Ca0.99Sr0.01)BaCo4O7結晶試料のマグネトキャパシタンスは最大51(%)を観測し、母物質をわずかながら上回ることに成功した。同様に、Ca(Ba0.98Sr0.02)Co4O7結晶試料においてもマグネトキャパシタンスの向上を観測した。これらの試料は異方性を考慮しないランダム・カット試料であり、ある特定の結晶方位でさらに特性向上が期待されるため、異方性測定へと進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた年次計画に沿ってほぼ計画通りに進展している。年次計画の中心テーマと平行して走らせている発展的テーマも、予備的実験は徐々に進捗しており、最終年度に向けて成果が期待される。
当初の研究計画に沿って順調に研究が進展しているので、大きな研究計画の変更は行わず、最終年度として、実験の総仕上げと、研究成果の発表などの研究総括を行う。
予定していた消耗品費などの研究費の一部を他の研究費でまかなうことができたため、予定よりも研究費の使用額が少額に抑えることができた。当初より予定していた装置の定期メンテナンスや修理、試料作製のための試薬や低温実験のためのヘリウムガス等の消耗品費に加えて、最終年度は研究成果を発表するための海外出張や、共同研究実験を行うために長期の海外出張を予定しており、これらの旅費に研究費を重点的に充てたいと考えている。
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