局所不均一性を導入した臨界点近傍の秩序相における相分離と外場制御

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 24540383
• 研究機関: 上智大学
• 研究代表者: 桑原 英樹 上智大学, 理工学部, 教授 (90306986)
• 研究期間 (年度): 2012-04-01 – 2015-03-31
• キーワード: 不純物置換 / 酸化物 / 強磁性 / 相転移 / アニール / マルチフェロイック / 酸化還元処理 / 誘電体

研究実績の概要

最終年度である本年度は、昨年度から取り組んでいるマルチフェロイック物質における不純物置換効果を検討した。更に従来より継続的に取り組んでいるMn酸化物を研究対象として、アニール処理によって酸素の局所不均一性を導入し、基礎物性がどのように変化するかも検討した。
具体的にはマルチフェロイック物質CaBaCo4O7のCa2+をY3+で置換することでCoイオンの形式価数を変化(Co+2.5-x/4)させたCa1-xYxBaCo4O7単結晶を作製し、磁性及び電気磁気効果の影響について調べた。その結果、Yの置換量xの増加とともにフェリ磁性転移温度は低温側にシフトし、それに伴って誘電率の変曲点と電気分極が立ち上がる温度も同様に低温側にシフトした。また、フェリ磁性磁化および電気分極が抑制される結果を得た。さらに、x = 0.10以上においては、磁化の立ち上がりが観測されなかったことから、フェリ磁性が失われたことが分かった。
Mn酸化物に関しては、酸化・還元雰囲気中でMn酸化物単結晶をアニール処理し、酸素の局所不均一性を導入して、その磁気的・電気的特性の変化を調べた。その結果、還元処理により酸素欠損を導入すると、予想通りホール・キャリア濃度が減少し、二重交換相互作用による金属相が不安定となるため強磁性相転移温度TCが低くなるという結果が得られた。一方、酸化処理を行うとホール・キャリア濃度が増加しTCが増大すると予想していたが、予想に反して過剰に導入された酸素が局所構造歪み、あるいは組成揺らぎをもたらし、TCが減少することを見出した。

備考

上記URLで研究成果として発表した論文へのリンクや研究内容の紹介を行っている。

研究成果

• [雑誌論文] Magnetic control of transverse electric polarization in BiFeO3 (2015)
  • 著者名/発表者名: M. Tokunaga, M. Akaki, T. Ito, S. Miyahara, A. Miyake, H. Kuwahara, and N. Furukawa
  • 雑誌名: Nature Communications 巻: 6 ページ: 5878-1～5
  • DOI: 10.1038/ncomms6878
  • 査読あり
• [雑誌論文] High field studies on BiFeO3 single crystals grown by the laser-diode heating floating zone method (2015)
  • 著者名/発表者名: M. Tokunaga, M. Akaki, A. Miyake, T. Ito, and H. Kuwahara
  • 雑誌名: Journal of Magnetism and Magnetic Materials 巻: in press. ページ: in press.
  • DOI: 10.1016/j.jmmm.2014.10.026
  • 査読あり
• [雑誌論文] Effects of Mn substitution on the thermoelectric properties of the electron-doped perovskite Sr1-xLaxTiO3 (2014)
  • 著者名/発表者名: T. Okuda, H. Hata, T. Eto, K. Nishina, H. Kuwahara, M. Nakamura, and R. Kajimoto
  • 雑誌名: Journal of Physics: Conference Series 巻: 588, part 2 ページ: 022035-1～5
  • DOI: 10.1088/1742-6596/568/2/022035
  • 査読あり
• [雑誌論文] Interplay between Ferroelectric and Antiferromagnetic Phase Transitions in RbCoBr3 (2014)
  • 著者名/発表者名: Y. Nishiwaki, T. Yamaguchi, M. Takashige, H. Kuroe, M. Akaki, H. Kuwahara, T. Kato, and K. Iio
  • 雑誌名: Journal of the Pysical Society of Japan 巻: 83 ページ: 114708-1～8
  • DOI: 10.7566/JPSJ.83.114708
  • 査読あり
• [雑誌論文] Successive Magnetic Transitions of Ca2CoSi2O7 in High Magnetic Fields (2014)
  • 著者名/発表者名: Mitsuru Akaki, Hideki Kuwahara, Akira Matsuo, Koichi Kindo, and Masashi Tokunaga
  • 雑誌名: Journal of the Physical Society of Japan 巻: 83 ページ: 093704-1～4
  • DOI: 10.7566/JPSJ.83.093704
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Preparation of red-emitting Eu2+-doped barium calcium silicon oxynitride by solid-state reaction and its luminescence properties (2014)
  • 著者名/発表者名: Hiroya MORISHITA, Anne C. A. DELSING, Hubertus T. HINTZEN, Hideki KUWAHARA1, and Kiyoshi ITATANI
  • 雑誌名: Key Engineering Materials 巻: 617 ページ: 149～152
  • DOI: 10.4028/www.scientific.net/KEM.617.149
  • 査読あり
• [雑誌論文] Magnetoelectric Effects in Mono-domain Crystals of BiFeO3 (2014)
  • 著者名/発表者名: Masashi Tokunaga, Mitsuru Akaki, Hideki Kuwahara, Toshimitsu Ito,
  • 雑誌名: JPS Conference Proceedings 巻: 3 ページ: 014038-1～6
  • DOI: 10.7566/JPSCP.3.014038
  • 査読あり
• [雑誌論文] Magnetic and Dielectric Properties in Multiferroic Cu3Mo2O9 under High Magnetic Fields (2014)
  • 著者名/発表者名: Haruhiko KUROE, Kento AOKI, Ryo KINO, Tasuku SATO, Hideki KUWAHARA,
  • 雑誌名: 10.7566/JPSCP.3.014036 巻: 3 ページ: 014036-1～6
  • DOI: 10.7566/JPSCP.3.014036
  • 査読あり
• [学会発表] 一次元磁性体BaCo2Si2O7の強磁場磁化過程 (2015)
  • 著者名/発表者名: 赤木暢，奥谷顕，吉澤大智，桑原英樹，萩原政幸
  • 学会等名: 日本物理学会第70回年次大会
  • 発表場所: 早稲田大学（東京都新宿区）
  • 年月日: 2015-03-21 – 2015-03-25
• [学会発表] Cu(II)-CO3系量子スピンラダー磁性体の1H-NMR (2015)
  • 著者名/発表者名: 小堀祥平，後藤貴行，桑原英樹，張笑，中野佑紀，西原禎文，井上克也
  • 学会等名: 日本物理学会第70回年次大会
  • 発表場所: 早稲田大学（東京都新宿区）
  • 年月日: 2015-03-21 – 2015-03-25
• [学会発表] Ba2Ti13O22の電子相転移とバナジウムドーピング (2015)
  • 著者名/発表者名: 小西孝彦，桑原英樹，仁科康佑，勝藤拓郎
  • 学会等名: 日本物理学会第70回年次大会
  • 発表場所: 早稲田大学（東京都新宿区）
  • 年月日: 2015-03-21 – 2015-03-25
• [学会発表] ペロブスカイト型BaSnO3へのスピン・キャリアドーピング (2015)
  • 著者名/発表者名: 東出唯志，芝野杏奈，勝藤拓郎，桑原英樹，梶原凌
  • 学会等名: 日本物理学会第70回年次大会
  • 発表場所: 早稲田大学（東京都新宿区）
  • 年月日: 2015-03-21 – 2015-03-25
• [学会発表] ABaM4O7(A=(Ca,Y), M=(Co,Fe))単結晶における電気磁気特性 (2015)
  • 著者名/発表者名: 梶原凌，仁科康佑，小田涼佑，赤木暢，桑原英樹
  • 学会等名: 日本物理学会第70回年次大会
  • 発表場所: 早稲田大学（東京都新宿区）
  • 年月日: 2015-03-21 – 2015-03-21
• [学会発表] 熱制御用マンガン酸化物結晶のバンド・フィリング制御 (2015)
  • 著者名/発表者名: 村上良明、太刀川純孝、齋藤智彦、桑原英樹
  • 学会等名: 第62回応用物理学会春季学術講演会
  • 発表場所: 東海大学湘南キャンパス（神奈川県平塚市）
  • 年月日: 2015-03-11 – 2015-03-14
• [学会発表] 一次元磁性体BaCo2Si2O7の強磁場物性 (2014)
  • 著者名/発表者名: 赤木暢, 奥谷顕, 吉澤大智, 桑原英樹, 萩原政幸
  • 学会等名: 強磁場科学研究会「強磁場が切り拓く物質科学のフロンティア」
  • 発表場所: 大阪大学豊中キャンパス（大阪府豊中市）
  • 年月日: 2014-12-04 – 2014-12-05
• [学会発表] 室温マルチフェロイクック物質BiFeO3の電気磁気効果 (2014)
  • 著者名/発表者名: 徳永将史，赤木暢，河智史朗、三宅厚志，伊藤利充，桑原英樹
  • 学会等名: 強磁場科学研究会「強磁場が切り拓く物質科学のフロンティア」
  • 発表場所: 大阪大学豊中キャンパス（大阪府豊中市）
  • 年月日: 2014-12-04 – 2014-12-05
• [学会発表] LD-FZ法で作製したBiFeO3単結晶の強磁場電気磁気効果 (2014)
  • 著者名/発表者名: 徳永将史，赤木暢，三宅厚志，桑原英樹，伊藤利充，宮原慎，古川信夫
  • 学会等名: 日本物理学会2014年秋季大会
  • 発表場所: 中部大学（愛知県春日井市）
  • 年月日: 2014-09-07 – 2014-09-10
• [学会発表] Cu(II)-CO3系スピンラダー構造を持つ磁性体の1H-NMR (2014)
  • 著者名/発表者名: 小堀祥平，後藤貴行，桑原英樹，張笑，中野佑紀，西原貞文，井上克也
  • 学会等名: 日本物理学会2014年秋季大会
  • 発表場所: 中部大学（愛知県春日井市）
  • 年月日: 2014-09-07 – 2014-09-10
• [学会発表] 軌道/電荷整列系Ba1-xSrxV13O18単結晶の物性 (2014)
  • 著者名/発表者名: 掛巣佑，神崎達也，小西孝彦，桑原英樹，勝藤拓郎
  • 学会等名: 日本物理学会2014年秋季大会
  • 発表場所: 中部大学（愛知県春日井市）
  • 年月日: 2014-09-07 – 2014-09-10
• [学会発表] CaBaCo4O7単結晶における電気磁気特性の不純物置換効果 (2014)
  • 著者名/発表者名: 仁科康佑，梶原凌，村上良明，加野直明，赤木暢，桑原英樹
  • 学会等名: 日本物理学会2014年秋季大会
  • 発表場所: 中部大学（愛知県春日井市）
  • 年月日: 2014-09-07 – 2014-09-10
• [学会発表] HIGH FIELD STUDIES ON BiFeO3 SINGLE CRYSTALS GROWN BY THE LASER-DIODE HEATING FLOATING ZONE METHOD (2014)
  • 著者名/発表者名: M. Tokunaga, M. Akaki, A. Miyake, T. Ito, and H. Kuwahara
  • 学会等名: Moscow International Symposium on Magnetism MISM-2014
  • 発表場所: Moscow, Russia
  • 年月日: 2014-06-29 – 2014-07-03
• [備考] 上智大学 物質科学研究室（桑原研）ホームページ
  • URL: http://www.ph.sophia.ac.jp/~kuwa-ken/