研究課題/領域番号 |
24540387
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
森 道康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (30396519)
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研究分担者 |
小椎八重 航 独立行政法人理化学研究所, 交差相関理論研究チーム, 副チームリーダー (20273253)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ジョセフソン効果 / シャピロステップ / 電圧標準 / 磁壁 / スピントロニクス / 強磁性ジョセフソン接合 |
研究概要 |
本研究では、超伝導や強磁性など複数の秩序状態の融合が生み出す、超高感度伝導制御に関する理論構築を目指している。一方、近年電子のスピンをエレクトロニクスに応用するスピントロニクスの急速な進展に伴い、強磁性体内の磁壁を電流で直接制御することが現実のものとなっている。そして、磁気ランダムアクセスメモリーを始めとした様々な応用が研究されている。したがって、磁壁の運動を実時間で高精度かつ高感度で観測する原理の提案は重要である。 今年度は、単一の平面状の磁壁の運動を、超伝導体を用いて高精度で観測する原理に取り組んだ。特に、強磁性体で隔てられた超伝導体の接合(強磁性ジョセフソン接合)を考え、その強磁性体中で磁壁が振動運動している場合の電流電圧特性を、等価回路模型を用いて導いた。磁壁の振動運動は、強磁性体に電流を流すことで誘起することが可能で、確立した実験技術である。我々の用いた等価回路模型は、抵抗とコイルに相当する素子の並列回路で、コイルに相当する素子は、超伝導体間を流れる超伝導電流成分に対応する。超伝導電流成分は磁気との結合があるため、超伝導電流成分を通して磁壁の振動運動の寄与が理論式に取り込まれる。その結果、磁壁の振動数の整数倍に比例定数をかけた電圧のところで、電流電圧特性が階段状に変化しうることを見出した。その比例係数は、プランク定数と素電荷という基礎物理定数のみで決まることが明らかになった。電圧はジョセフソン効果(シャピロステップ)を用いて9桁という極めて高い精度で規定されている。また、基礎物理定数も同様な精度で規定されている。したがって、磁壁の振動数は、これら超高精度で求まっている物理量のみで決まっているので、磁壁の振動数自体が高精度で観測が可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画していた、単一の平面状の磁壁の運動に関する高精度な観測原理を見出すことができた。そして、その結果を認知度の高い学術誌で発表し、プレス発表を行った。この成果は、新聞でも紹介されている。例えば、日刊工業新聞( 平成24年4月19日)、科学新聞(平成24年5月11日)。したがって、研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで達成したのは、単一の平面状の磁壁の単振動運動に関する高精度な観測原理であった。より複雑な運動も、フーリエ変換した周波数空間において特徴的な振動数があれば、これまでの成果を応用可能だと考えられる。一方、より一般的な運動状態や、磁壁構造が単純な平面構造ではなく、磁気渦などの場合に、その運動を超伝導体と組み合わせて、高感度高精度に観測する手法へと発展させていく。磁気渦構造は、ある種の金属では格子を組むことが知られており、それらを応用する研究も進展していることから、その運動を高精度かつ高感度に測定する手段の提案は重要になると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
より複雑な磁壁構造を扱うためには、数値計算が不可欠である。磁壁構造の実空間実時間シミュレーションが必要になると想定されるので、大容量記憶装置を搭載した計算機を導入したい。また、今年度得られた成果、およびその後の発展を、日本のみならず世界へと発信すべく、国際会議などへも積極的に参加し、研究成果の周知に努めていく。
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