昨年度末に予定していたアメリカ物理学会での成果発表が、同じ時期に別の共同研究に参加しなければならず、アメリカ物理学会に参加が出来なくなった。このため、研究期間の延長を行い、今年度に研究成果発表を行い全研究計画を終了した。別の共同研究は、中性子を使う実験研究で、そのビーム割り当ての時期は予見できないものであった。今年度は、磁気の流れであるスピン流を制御する上で不可欠なスピンホール効果に関する研究を行った。極僅かにイリジウムなどの3d遷移金属を添加した銅のスピンホール効果に着目して理論研究を行った。元素依存性と電子相関の効果を系統的に調べ、イリジウムや白金で電子相関の効果が強く現れることを見出した。また、磁性体の一例として、フラストレートスピン梯子系の研究も行った。特に、磁化曲線に複数のプラトーやカスプ状の変化が現れることを見出した。これらの変化は、梯子の桁方向のスピン三重項で定性的に記述できる部分もあるが、三重項と一重項とで構成される擬スピンを導入するのが有効であることも分かった。これらの結果は、量子スピン系におけるスピン伝導や熱伝導の研究への発展が期待される。
|