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2013 年度 実施状況報告書

複合極限環境下での4f電子系化合物の価数マッピングによる量子相転移の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24540389
研究機関公益財団法人高輝度光科学研究センター

研究代表者

河村 直己  公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (40393318)

キーワード強相関電子系 / 量子相転移 / 量子臨界現象 / 価数揺動
研究概要

本研究課題では,4f電子が生み出す量子ゆらぎによる量子相転移現象を,4f電子数(価数)ゆらぎという観点から理解するために,複合極限環境(温度・磁場・圧力)下でのCeおよびYb化合物のX線吸収による価数相図の作成を目指している.
今年度はCe系化合物に焦点を絞り,様々なCe化合物に対するCe価数を評価するために,Ce L3-吸収端でのX線吸収スペクトルの温度変化(4-300 K)や圧力変化(0-15 GPa)測定をSPring-8 BL39XUにおいて実施した.また,量子相転移現象を理解する上で,関連物質となるPr化合物やYb系化合物に対する価数評価も並行して行った.Ce L3-吸収端エネルギーは,5.7 keVと低く,高圧下測定で利用する高圧セルの窓材(ダイヤモンド)のX線透過率が低くなり,統計精度の高いX線吸収スペクトルを得るのが困難となる.そこで窓材に穴加工を施すことでX線透過率の向上を図り,高品質のスペクトルを得ることに成功した.
一方で,微小な価数変化も敏感に捉えることが可能なX線発光分光測定をCe系化合物に適用することに成功した.また,様々なYb化合物の結果と併せて,X線発光分光を利用した高エネルギー分解能X線吸収スペクトルによる価数評価に対する問題点の解決法を見出した.
X線吸収・発光分光と電気抵抗の同時計測が可能な小型高圧セルに対して,温度低下による圧力増大の問題点を解決し電気抵抗計測を試みたところ,端子がダイヤモンド・アンビルによって切断される問題点が発覚した.高圧セルやアンビル形状の改良を進め,電気抵抗計測の早期実現を目指す.
上記の実績を踏まえ,最終年度は価数評価において重要な鍵となるマクロ物性(電気抵抗)や結晶構造(粉末X線回折)の評価を同一試料環境下(in-situ)で行い,価数と物性定数の相関をより確実に決定付けることを目指す.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度の実施計画のうち,Ce系化合物に対するCe価数評価法の確立と,温度-圧力相図の作成は達成することができたものの,X線吸収・発光分光と電気抵抗またはX線回折を同時計測するためのシステム構築は達成できなかった.
一方で,高圧セルの温度低下による圧力増大の問題は,セルの改良によって解決した.しかしながら,高圧下での電気抵抗計測において,端子がダイヤモンド・アンビルによって切断されてしまう問題が新たに発覚し,セルやアンビル形状のさらなる改良が必要であることが判明した.

今後の研究の推進方策

様々なYb系化合物およびCe系化合物における価数評価が概ね成功したことにより,最終年度は,「高圧下での電気抵抗計測システムの構築」を優先的に推進する.高圧下での電気抵抗計測に際し明らかになった問題点の解決を進め,その早期実現を目指す.これによって,最終年度でYb系またはCe系化合物におけるマクロ物性と価数の同一環境下測定を実現し,それらの相関を明らかにする.また,電気抵抗計測が実現された場合,X線回折の計測へと着手し,X線吸収による価数とX線回折による結晶構造(体積変化)との相関を明らかにすることを目指す.
上記の内容を実現するにあたり,電気抵抗計測で実現可能な試料厚さとX線吸収またはX線回折に最適な試料厚さのマッチングの問題が生じることが予測される.本問題点に関しては,電気抵抗計測用試料のサンプリング技術向上を目指し,X線吸収と電気抵抗計測の同時計測が実現可能な試料厚さの条件を見出す.

次年度の研究費の使用計画

X線発光分光計測用のアナライザー結晶の購入に際し,その仕様検討に多くの時間を費やしたこと,および結晶の製作にも時間を要することにより,平成25年度内の納品が困難となったため,繰越金が発生した.
平成25年度に購入予定であったX線発光分光計測用のアナライザー結晶は,その仕様はすでに決定しており,平成26年度初旬に納品される予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Simultaneous Pressure-Induced Magnetic and Valence Transitions in Type-I Clathrate Eu8Ga16Ge302014

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Onimaru, Satoshi Tsutsui, Masaichiro Mizumaki, Naomi Kawamura, Naoki Ishimatsu, Macros A. Avila, Shuhei Yamamoto, Haruki Yamane, Koichiro Suekuni, Kazunori Umeo, Tetuji Kume, Satoshi Nakano, and Toshiro Takabatake
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 83 ページ: 013701

    • DOI

      10.7566/JPSJ.83.013701

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chemical effects of high-resolution Yb Lγ4 emission spectra: a possible probe for chemical analysis2013

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Hayashi, Noriko Kanai, Naomi Kawamura, Yasuhiro H. Matsuda, Kentaro Kuga, Satoru Nakatsuji, Tetsuro Yamashita, and Shigeo Ohara
    • 雑誌名

      X-ray Spectrometry

      巻: 42 ページ: 450-455

    • DOI

      10.1002/xrs.2502

    • 査読あり
  • [学会発表] Ce2NiGa12におけるCe L3-吸収端での高圧下X線吸収測定2014

    • 著者名/発表者名
      河村直己, 松林和幸, 石松直樹, 水牧仁一朗, 上床美也, 大原繁男, 渡辺真仁
    • 学会等名
      日本物理学会第69回年次大会
    • 発表場所
      東海大学(神奈川県)
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] X線吸収分光法によるPrTi2Al20のPr価数の圧力変化2013

    • 著者名/発表者名
      河村直己, 松林和幸, 石松直樹, 水牧仁一朗, 酒井明人, 中辻知, 上床美也, 渡辺真仁
    • 学会等名
      日本物理学会2013年秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県)
    • 年月日
      20130925-20130928
  • [学会発表] 高圧力下でのX線吸収分光法による電子状態・磁気状態の研究

    • 著者名/発表者名
      河村直己
    • 学会等名
      未来を拓く高圧力科学技術セミナーシリーズ(39)「高圧力と分光測定技術」
    • 発表場所
      日本大学(東京都)
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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