研究課題/領域番号 |
24540390
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 譲 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (30342794)
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研究分担者 |
角 大輝 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40313324)
矢野 孝次 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80467646)
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キーワード | ランダム力学系 / 雑音誘起現象 / 確率的カオス / 非線形時系列解析 |
研究概要 |
ノイズと決定論的力学の相互作用に伴う雑音誘起現象は非線形物理学では古くから研究されてきた問題です。例えば確率共鳴、ノイズ同期、雑音誘起カオスがその典型例です。近年ノイズ強度に応じて多重転移を示す現象(多重雑音誘起現象)、ノイズ強度に依存 して軌道分布が多様な振動を起こす現象(統計的周期性)といった、これまでに知られていなかった雑音誘起現象が、広いクラスの非線形系に偏在していることがわかってきました。本研究の目的は「雑音誘起現象論」の体系化を進めるとともに、ランダム力学系において、「決定論カオス」に相当する複雑現象を概念化し、数理科学的に基礎づけることにあります。 (A) 様々な雑音誘起現象のメカニズムとその普遍性、現象クラスの分析 研究代表者の先行研究によると、多段回の雑音誘起転移を示す多重雑音誘起現象、軌道密度が振動する統計的周期性は興奮系で普遍的であることが数値的に検証されました。さらに雑音誘起ベイシンを数値的に見いだし、その普遍性を理論的に解析中です。 (B) 大自由度多スケール系の実験時系列解析 大自由度多スケール系の実験データとして(3)ヒトの脳波(提供者:北城圭一、理化学研究所)についてランダム結合振動子系によるモデリングを行いました。また新たに(4)ダイスロールのダイナミクス(提供者: Tomasz Kapitaniak、Lodz Technical University)のランダム力学系モデルによる時系列解析をすすめました。この結果は松永伸夫氏の修士論文としてまとめられ、現在出版準備中です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の「研究の目的」に記載した以下の二つの課題(A), (B)については、おおむね順調に研究が進んでいます。 (A) 様々な雑音誘起現象のメカニズムとその普遍性、現象クラスの分析については、当初の計画を遂行できました。現在結果を論文にまとめています。さらに雑音誘起異常拡散、雑音誘起ベイシンといったいくつかの新たな雑音誘起現象がみつかっています。これらのうちの一部は2014年2月に京都大学数理解析研究所で開催された「ランダム力学系とその応用」において講演発表され、関連論文を執筆中です。 (B) 大自由度多スケール系の実験時系列解析について、(3)ヒトの脳波(提供者:北城圭一、理化学研究所)について解析を進めました。結果の一部は2013年9月にサンタフェで開催されたNOLTA2013で発表、出版されました。(4)真性粘菌の形態変化(提供者:青野真士、理化学研究所)のデータについては、共同研究者移籍のために解析を休止しています。かわりに(4)ダイスロールのダイナミクス(提供者: Tomasz Kapitaniak、Lodz Technical University)のランダム力学系モデルによる時系列解析をすすめ、現在関連論文を執筆中です。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、以下の課題(A), (B)を遂行します。また本年度から課題(C)に取り組みます。 (A)多重雑音誘起現象、統計的周期性、に加えて雑音誘起異常拡散、雑音誘起ベイシンを含む様々な雑音誘起現象の普遍性とその現象クラスを解析した結果を出版します。 (B)大自由度多スケール系の非線形時系列解析を行い、実験データからランダム力学系を抽出します。脳波データの解析、ダイスロールデータの解析を行い、出版します。 (C)ランダム力学系における複雑現象の諸概念構築と不変量の定式化を行います。英国Imperial College Londonの力学系グループの研究者と協力してランダム力学系理論、非自励力学系理論、確率過程論に基づき、様々な雑音誘起現象の分岐理論を構築します。 また、2014年9月に本課題と角大輝(阪大)の基盤研究(C)「ランダムな複素力学系および正則写像半群の力学系の研究」の協賛により共同研究集会「ランダム力学系とその応用2」を開催予定です。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度、Imperial College London Dynamical Systems Groupとの共同研究用旅費にあてるため前倒し支払い申請したが、航空券価格が変動したため、未使用分が繰り越し額となった。 この前年度未使用の繰越金は今年度の予算とあわせて、Imperial College London Dynamical Systems Groupとの共同研究のための旅費に使用する。
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