研究課題/領域番号 |
24540394
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
足立 聡 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (90211698)
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研究分担者 |
窪谷 浩人 神奈川大学, 工学部, 教授 (60281143)
戸田 幹人 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (70197896)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 数理物理 / 非線形物理 / 応用数学 |
研究概要 |
数学者の金子譲一氏によりブレイクスルーがあった多変数超幾何関数の理論を我々は更に拡張した。それにより、結合量子系の絡まり合いの統計性を特徴付けるシュミット固有値の1体分布関数に対する厳密な解析的表式と最低次を超える漸近評価式を入手することに我々は初めて成功している。この1体分布関数の理論式を、現実の量子カオス系での数値実験による精密な測定結果と、定量的かつ徹底的な比較を行った。その結果、我々の理論式は数値実験の結果とたいへん精密に一致することが確かめられた。加えて、良く発達した量子カオス系においても、完全なランダム行列による予言からはごくわずかなずれが、分布関数のある一部に、存在することも観察された。これは、予想されていなかったことである。これは、かなり発達した量子カオス系においても、完全なランダム行列理論では記述できない力学的残余がごくわずか存在することを示している。さらに、この力学的残余を感度良く検出するためには、シュミット固有値に関する統計量のどこを見れば良いのかをも示唆している。以上の成果は既に論文としてまとめて、Phys.Rev.Eへ既に投稿している。現在、査読を受けている段階である。 加えて、上述の数値実験により示唆された、発達した量子カオス系の持つ力学的残余を検出するための大変敏感な特性量に対する理論を現在構築中である。この新しい特性量は間もなく理論的解析が終わり、数値実験との比較にかけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子絡まり合いの統計量に対する我々の理論式と、量子カオス系における大規模数値実験による実測の比較は、成功裏に行われた。その結果は我々の理論式の精密さを証明した。この結果は論文として既に投稿して、査読も好意的に進んでいる。それに加えて、上述の比較によって、量子カオス系にごくわずかに残る力学的相関を検出するための「鍵穴」を見つけることもできた。現在、この鍵穴にもとづく特性量の理論的予言を得るべく、解析的に計算を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
発達した量子カオス系に残るわずかな力学的相関を検出するために、シュミット固有値の1体分布関数よりも敏感な特性量があることが、我々の数値実験により示唆された。現在、この敏感な特性量に対する理論予想を解析的に計算している。計算では、なんと、完全可積分系の研究の中心的な主題として研究されてきた非線形常微分方程式であるパンルベ方程式が現れた。現在、数学者によるパンルベ方程式の理論をさらに拡張することにより、そのわずかな力学的相関をも検出するはずの特性量に関する理論的予言を解析計算している。この解析計算をまず仕上げる。そののちに、この理論的予言と現実の量子カオス系での大規模数値シュミレーションとを比較する作業へ進む。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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