研究課題/領域番号 |
24540394
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
足立 聡 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (90211698)
|
研究分担者 |
窪谷 浩人 神奈川大学, 工学部, 教授 (60281143)
戸田 幹人 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (70197896)
|
キーワード | 量子エンタングルメント / 量子カオス / 乱雑行列理論 / 多変数超幾何関数 |
研究概要 |
結合量子系のエンタングルメントを定量化するために、理論的な確率模型として固定跡アンサンブルを用いてシュミット固有値の1体分布関数の理論式を既に計算していた。当該年度においては、実際の結合量子カオス系としてkicked rotatorを用いた数値シュミレーションを長時間にわたり行った。この系の時間発展する波動関数を時間に沿ってサンプリングを行い、対角化により、シュミット固有値を求めて、シュミット固有値の1体分布関数を精密に計測した。このようにして求めた kicked rotator 系のシュミット固有値の1体分布関数を、我々の理論計算による1体分布関数と精密に比較した。kicked rotator 系の動力学が十分にカオス的な場合には実測分布が理論分布にたいへん良く一致することが確かめられた。ただし、そのような場合でも、超精密な統計的検定を用いて、実測分布の統計的揺らぎの中に埋もれている情報まで引き出すと、シュミット固有値の1体分布関数の最大固有値とそれに近い固有値の領域で、極わずかな理論分布との違いあることが示唆された。これは、シュミット固有値のうちで最大固有値の分布関数が、結合量子系の動力学的性質を敏感に検出する道具に使える可能性を意味する。以上の結果は、論文として、Phys.Rev.E.87 (2013)062921に報告している。 さらに、上述の研究により重要性が示唆された、最大シュミット固有値の分布関数の理論計算を行った。既に、理論分布関数の計算には成功した。現在、結合kicked rotator系における数値シュミレーションにより最大シュミット固有値の分布関数を計測して、理論分布関数と比較する作業を実行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シュミット固有値の1体分布関数については、理論分布と実測分布の比較により、理論分布の正しさ、正確さが確かめられた。最大シュミット固有値の分布関数については、多変数超幾何関数の理論を全面的に利用することにより、理論分布関数を計算することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、既に理論計算に成功した最大シュミット固有値の理論分布関数を、結合kicked rotator系での実測分布関数と精密に比較する作業を完結させたい。これにより、さらなる理論計算において、何をターゲットにして進めば良いのかがわかるはずである。
|