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2013 年度 実施状況報告書

複雑ネットワークにおける非線形輸送モデルの統計物理学的特性

研究課題

研究課題/領域番号 24540395
研究機関東京工業大学

研究代表者

高安 美佐子  東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20296776)

キーワード複雑ネットワーク / 相転移現象 / 非線形輸送システム / 凝集現象
研究概要

複雑ネットワークの研究の対象として最初に選択した企業ネットワーク上での輸送の問題に関しては、昨年度、非線形輸送モデルの基盤を構築することができたので、今年度は、そのモデルに基づいてふたつの発展的研究を推進した。ひとつ目は、非線形輸送の指数をモデルの中で変化させることで見出された新しいタイプの相転移現象である。モデルの中で非線形輸送の指数を次第に大きくしていくと、ある閾値を越えると、ネットワーク上で輸送のパターンが劇的に変わり、流れが局在するようになる現象を数値シミュレーションと理論によって明らかにした。もうひとつは、複雑なネットワーク輸送の中の大動脈に相当するツリー構造の抽出する手法の開発であり、これは、それぞれのノードから出る流れの最大値に着目することで実現できることを見出した。これらの成果は、論文としてまとめる作業を進めている。
新たな複雑ネットワーク研究の対象として、金融市場における市場間相互作用が形成するネットワーク構造を解明する研究に着手した。市場間の相互作用は変動の相互相関係数からネットワーク構造を抽出する手法が知られているが、当研究では、市場価格の統計的性質の変化のタイミングを見ることで市場間の相互作用や背後に潜むネットワーク構造を抽出する方法を考案している。そのための基本技術として、市場価格の統計的性質の変化を取り出す手法を論文としてまとめた。
また、成長率がランダムに独立に変動する要素が結合した集団の統計的性質を解析し、成長率の分布が安定分布になることを理論とシミュレーションによって確認した結果を論文として発表した。ここで予想される成長率の分布は、現実に観測される企業ネットワークにおける売上の成長率の分布と非常によく似ていることも見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当該研究の大きな目的だった拡張重力型の方程式の基盤を確立し、派生的に、新たな相転移現象が非線形輸送モデルの中に潜在することを発見し、また、中心的な流れの構造を抽出する手法を開発することができた点において、当初の計画以上に進展していると言える。さらに、新たな研究対象として、通貨市場に潜在するネットワーク構造を解明するための新しい手法に関しても着手することができた。

今後の研究の推進方策

企業ネットワークに関しては、新たに取り組む課題としては、リンクを徐々に取り除いていったときに、急激にネットワークがバラバラになるパーコレーション相転移のシミュレーション実験を行う予定である。複雑ネットワークの場合には、ランダムにリンクを除去した場合には相転移を起こさないで最後まで大きなクラスターが残るというのが常識だったが、試験的に進めているシミュレーションの結果、非常に低い密度ではあるが、パーコレーション相転移が実現しているらしいことを見出している。システム全体の連結性は輸送を考える上でも最も基本的であり、これを精密な数値計算によって明確にする。
企業の重力方程式による輸送量の推定モデルに関しては、より現実のデータと合うようにモデルを精緻化する。
新たな課題である金融市場のネットワークに関しては、時系列変動の特徴抽出方法をさらに改良し、市場間のつながりの強さから潜在するネットワーク構造を取り出す研究を進める。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は旅費を主催者側の負担で招待される海外講演が多く、当初の予定よりも旅費を必要としなかったため残額が発生した。また、投稿中の論文の採択が予想よりも遅れ、年度内に支払ができなかったこともその一因である。
今年度は論文投稿数が当初予定よりも増加する見込みであり、英文校正料やオープンアクセス化に伴い高額化している学術誌への論文投稿などに充てる予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Financial Brownian particle in the layered order book fluid and fluctuation-dissipation relations2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshihiro Yura, Hideki Takayasu, Didier Sornette, Misako Takayasu
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 112 ページ: 098703

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.112.098703

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Generalised Central Limit Theorems for Growth Rate Distribution of Complex Systems2014

    • 著者名/発表者名
      Misako Takayasu, Hayafumi Watanabe, Hideki Takayasu
    • 雑誌名

      Journal of Statistical Physics

      巻: Vol 155, Issue 1 ページ: 44-71

    • DOI

      10.1007/s10955-014-0956-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rapid detection of the switching point in a financial market structure using the particle filter2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshihiro Yura, Hideki Takayasu, Kazuyuki Nakamura, Misako Takayasu
    • 雑誌名

      Journal of Statistical Computation and Simulation

      巻: online ページ: -

    • DOI

      10.1080/00949655.2013.781603

    • 査読あり
  • [学会発表] The dynamics of the Japanese financial markets and the Bank of Japan's interventions: Real data case studies

    • 著者名/発表者名
      Misako Takayasu
    • 学会等名
      The 20th Annual Riskminds Conference
    • 発表場所
      Hotel Okura, Amsterdam, Netherland
    • 招待講演
  • [学会発表] Network Properties of Business Firms in Japan: From Structure to Transport

    • 著者名/発表者名
      Misako Takayasu
    • 学会等名
      ESHIA Winter Workshop in Singapore
    • 発表場所
      Nanyang Technological University,Singapore
    • 招待講演
  • [学会発表] Modeling of Japanese business transactions; Evaluation of systemic risks, and stress tests

    • 著者名/発表者名
      Misako Takayasu
    • 学会等名
      AESCS2013 The 8th International Workshop on Agent-based Approach in Economic and Social Complex Systems
    • 発表場所
      Shibaura Institute of Technology, Tokyo
  • [学会発表] 日本企業間取引ネットワークを用いた日本経済のストレステストの提案

    • 著者名/発表者名
      高安美佐子
    • 学会等名
      統数研共同研究集会「経済物理学とその周辺」平成25年度第一回研究会
    • 発表場所
      キャノングローバル研究所,東京
  • [学会発表] Estimation of flows in Business to Business transaction network

    • 著者名/発表者名
      Misako Takayasu
    • 学会等名
      Econphysics Colloquium 2013 & Asia Pacific Econophysicss Conference 2013
    • 発表場所
      Postech, Pohang, Korea
    • 招待講演
  • [学会発表] Analysis and modeling of one million Japanese firms’ transactions: Evaluation of systemic risks, and stress tests

    • 著者名/発表者名
      Misako Takayasu
    • 学会等名
      CORDIS FP7-ICT FET Proactive: “Dynamics and Coevolution in Multi-Level Strategic INteraction GAmes",CONGAS Delft Joint WP Meeting
    • 発表場所
      Delft University of Technology, Delft, Netherland
    • 招待講演
  • [学会発表] 社会・経済活動のマルチ階層シミュレーションにむけて

    • 著者名/発表者名
      高安美佐子
    • 学会等名
      スーパーコンピュータによる社会シミュレーションとその将来
    • 発表場所
      理化学研究所計算科学研究機構,神戸
    • 招待講演
  • [学会発表] Quick detection of financial market instability

    • 著者名/発表者名
      Misako Takayasu
    • 学会等名
      Workshop on Complexity and Systemic Stability
    • 発表場所
      Imperial College London, U.K.
    • 招待講演
  • [学会発表] Review of study on business firm networks in Japan:Transport on complex networks

    • 著者名/発表者名
      Misako Takayasu
    • 学会等名
      Seminar talk at Prof. Aste's laboratory, University College London
    • 発表場所
      University College London, U.K.
    • 招待講演
  • [備考] 東京工業大学 高安美佐子研究室 ホームページ

    • URL

      http://www.smp.dis.titech.ac.jp/index.html

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公開日: 2015-05-28  

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