研究課題/領域番号 |
24540397
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大鳥 範和 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20272859)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際交流者研究 / フランス:イギリス / 分子動力学法 / 酸化物ガラス / ホウ酸 / ケイ酸 / アルミナ |
研究概要 |
リチウムおよびセシウムホウ酸ガラスについて、第一原理計算に基づいて新たに得られた分極イオンモデル関数を用いて分子動力学計算を行った結果、電荷を部分イオン性として定式化することで4配位ホウ素の割合が実験値と比較可能な組成領域において良い一致を示す結果が得られた。また、B-O-Bの角度分布は120度から130度付近にピークが観測され、六員環の形成する上でより妥当な構造が得られていると結論した。一方、3配位ホウ素と4配位ホウ素の各ユニット中に存在する非架橋酸素の割合では、アルカリ酸化物の濃度が増加するにつれて、4配位ホウ素ユニット中に存在する割合が増加した。また、90度付近にも小さなピークが観測され、これらの系においても四員環構造が生成していると推測された。四員環について構造を詳しく解析した結果、角度分布、配位数から四員環中のホウ素の4配位構造が正四面体から大きく歪んでいることが示された。さらに、四員環を構成するO-O、B-B間距離の分布をみると全粒子と比較し平均して10%程度近い位置にあることがわかった。以上の結果から四員環構造はMD計算による人工的構造であることが示唆された。そこで、四員環を生成する要因として冷却速度の可能性を検討した結果、ガラス転移点直上の温度において、より長時間、緩和のための時間発展を行うことで四員環の生成する割合が減少する傾向が判明した。以上の結果から、得られた相互作用関数は有望であるものの、その妥当性を確立するために、ガラス転移点直上での構造緩和を進めることが重要であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホウ酸ガラス系について、実験結果との比較において妥当性が示唆される相互作用関数を求めることができた。これをさらに確実にするために、今後さらにガラス転移点直上での長時間に及ぶ構造緩和を進めることが必要であるが、現時点で有望な相互作用関数が得られており、おおむね順調であると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらにガラス転移点直上での構造緩和を進めて、4員環のような人工的構造物の形成が減少することを確認する。また同様の手法を、ケイ酸ガラス系へ適用することを進めて、その普遍的有効性を確認する。この観点から、さらにアルミナを添加した系についても検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際協力のための海外出張によってパリ第6大学のSalanne博士およびオックスフォード大学のMadden教授と結果について討議し、共同発表の準備を進める。長時間の構造緩和の計算のため、物品費によって高速演算装置1台を追加購入して活用する。
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