純粋な珪酸ガラス、および酸化ナトリウムと酸化アルミニウムを混合した珪酸ガラス、また酸化カリウムと酸化アルミニウムを混合した珪酸ガラスについて、それぞれ第一原理計算を行い、その結果に基づいて、組成に依らずに適用可能な分極イオンモデル(PIM)と異方的斥力モデル(AIM)をそれぞれ構築した。それらを用いて分子動力学計算を行い、高温状態から冷却させてガラス構造を作成した。まず得られた構造を用いて静的構造因子を評価し、X線および中性子回折実験の結果と比較したところ、どの組成でも実験値を良く再現することができた。そこで各イオンの配位構造、特にガラスの主鎖を形成する酸素周りの構造について、X線および中性子回折実験やNMR実験に基づく解析結果と比較した。その結果、結合距離は実験値よりもやや過大評価されているものの、その配位数、主鎖数、および酸素の結合種分布は実験値と良く一致を示した。特にAIMで得られた結合距離においては、実験値と同様の組成依存性が確認できた。またPIMでは、溶融状態や高圧下で現れる5配位珪素や5配位アルミニウムが一定量存在したが、AIMを用いた冷却緩和ではそれらの割合が有意に減少し、より実験結果の再現性が良くなった。また、それに応じてガラス中の非物理的な結合角分布が大きく減少したことから、異方的な斥力はガラスの冷却過程に重要な役割を果たすことが分かった。さらに、純粋な酸化チタンに対しても第一原理計算を実施して、PIMレベルのみではあるがモデルの構築を行った。その結果、結晶の多形に対する平衡構造を正確に再現することに成功した。以上の結果から、これらの主要な酸化物の相互作用関数の一般化を達成することができた。
|