研究実績の概要 |
ごく最近、高次元極限での剛体球系では、レプリカ液体論によるガラスの平均場理論が厳密に展開できることが明らかになってきている。昨年度末、吉野はFrancesoco Zamponi博士(ENS Paris)とともに、この系においてシア歪みを含む場合に一般化した剛体球ガラスの自由エネルギーの厳密な表式を導出することに成功した。これに基づき、剛性率の厳密な計算(1段階のレプリカ対称性の破れ(RSB)、および連続RSBの場合)を行った。特に、ジャミング転移点近傍にあるランダム充填系の剛性率の臨界スケーリング則を、初めて第一原理的な理論計算から捉えることができた。さらに、連続RSB構造を反映して、階層的な剛性率が予言され、metabasinの剛性率は、上記の剛性率よりもずっと小さく、別のスケーリング則に従うことが明らかになった。 (論文発表 Yoshino-Zamponi, Physical Review E (2014))
上記の結果は、スピングラスにおけるいわゆるゼロ磁場冷却(ZFC)帯磁率と磁場中冷却(FC)帯磁率の違いに相当するアノマリーがジャミング転移点近傍の剛体球ガラスの剛性率にも存在する可能性を示唆している。この予想に基づき、3次元ソフトコア系のジャミング点近傍での数値シミュレーションを行い、予想されるアノマリーを強く示唆する結果を得た。(学会発表 中山-吉野(日本物理学会, 2015/03/22))
また、吉野は、Zamponi博士らとともにさらに平均場理論をさらに展開し、上記の剛体球ガラスの準安定状態を圧縮してジャミングさせたり、逆に減圧して溶かしたり、シアを掛けて降伏させたりするプロセスを追う(state following)解析を行った。その結果、線形応答のみならず、非線形応答、特に降伏応力を捉えることに成功した。(Rainone-Urbani-Yoshino-Zamponi, Physical Revlew Letters (2015)).
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