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2012 年度 実施状況報告書

多者間の非古典相関に関する量子情報理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24540405
研究種目

基盤研究(C)

研究機関広島大学

研究代表者

石坂 智  広島大学, 総合科学研究科, 教授 (10443631)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード国際情報交換
研究概要

非古典相関や量子相関の性質を、量子状態の複製(cloning)という量子情報処理の観点から調べた。量子状態の完全な複製はNo-cloning定理によって禁止されているが、近似的な複製は可能である。しかしながら、このような近似的な複製では、複製された量子状態間には何かしらの相関(量子もしくは古典相関)が残っており、この状況は量子情報を複製したというよりは、量子情報を複数の系に単に分配したに過ぎないと言うことができる。
そこで、複製された量子状態間に全く相関がないような近似的複製(無相関の複製)は可能なのかを考える。(近似的に)複製された系の間に相関が全くなく、それぞれの複製が元の量子情報の一部を保持しているとき、元の量子情報は複数の系に分割されたと言うことができるだろう。すなわち、無相関の複製可能性を調べることは、量子情報の分割可能性を明らかにすることでもあり、極めて基本的な問題である。例えば、元の量子情報を100としたとき、50対50や10対90, あるいは10対10(このとき80は失われる)のように分割できるかどうかを明らかにするということである。また、量子暗号における安全性にも関係した応用上も重要な問題である。
この問題に関しては、任意の純粋状態が入力されたとき、それを(確率1の)決定論的な方法で分割することは不可能であることが示されている。すなわち、量子情報は複製できないだけではなく、分割すらできないという強い制限が存在していることになる。またこれより、確率的にも量子情報は分割できないことが示唆されている。しかしながら、本年度の研究で、確率的には量子情報の分割は可能であることを示すことができた。その際の最適な分割忠実度の導出にも成功した。また、分割忠実度は決定論的か確率論的で大きく変化し、このことは通常の近似的複製と大きく異なることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

多者間の非古典相関の性質を調べることが研究目的である。方法論が計画とは異なってしまたっが、複数(多者)の系の間に相関が全くないという状況における量子情報処理を考えることにより、逆説的に相関の役割を明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

本年度明らかにした量子情報の分割可能性については、一般次元の系への拡張を行う。また、量子情報の分割における最適分割忠実度は、超光速通信不可能性(no-signaling)とも密接に関連していると予想されるので、この関連を明らかにする。
一方、量子情報の近似複製は、研究代表者が以前提唱した新しい量子テレポーテーションの方法(port-based teleportationと呼ばれるスキーム)とも、数学的には密接に関係していることも明らかになっている。しかしながら、この方法で一般の高次元の量子状態を転送する際の最適忠実度は未だ明らかになっていない。そこで、port-based teleportationの高次元への拡張を行う。これにより、高次元における近似的複製の最適忠実度や、多者間の量子相関における一夫一妻性の性質が明らかになると期待できる。

次年度の研究費の使用計画

研究の実施に必要となる量子情報関係書籍の購入、ならびに調査研究旅費、成果発表旅費、学会参加費用と論文投稿費用。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 量子情報の分割と忠実度

    • 著者名/発表者名
      関野裕司、石坂智
    • 学会等名
      第27回量子情報技術研究会
    • 発表場所
      慶應義塾大学
  • [学会発表] LOCCによる量子状態スワップ

    • 著者名/発表者名
      生藤貴也、石坂智
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学
  • [学会発表] 量子情報の分割と忠実度

    • 著者名/発表者名
      関野裕司、石坂智
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学

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公開日: 2014-07-24  

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