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2013 年度 実施状況報告書

時空カオスの一般化Langevin記述についての実験研究

研究課題

研究課題/領域番号 24540408
研究機関九州大学

研究代表者

日高 芳樹  九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70274511)

キーワード時空カオス / 一般化Langevin方程式 / 液晶電気対流 / ソフトモード乱流 / 欠陥乱流 / 相関関数 / 記憶関数 / 揺動散逸関係
研究概要

液晶電気対流では、液晶配向によって制御できる系の対称性の違いによって2種類の時空カオスが現れる。液晶配向が電極に平行で連続回転対称性が強制的に破れているプレーナー配向系では「欠陥乱流」が、電極に垂直で連続回転対称性が自発的に破れているホメオトロピック配向系では「ソフトモード乱流」が生じる。本研究では主にそれら2種類の時空カオスを対象とする。
H24年度はソフトモード乱流についてEuler的観点、すなわち時空カオス・パターンを観測し、その空間Fourierモードの時系列から相関関数、記憶関数を求めたが、H25年度は同様の研究を欠陥乱流に対して行った。欠陥乱流では、対流と液晶配向のHopf不安定性に由来する振動成分が相関関数に含まれるため、ソフトモード乱流で確立した手法が使えないことが明らかとなっていた。そこで、振動成分が含まれる場合の一般化Langevin方程式を新たに規定し、それに基づいて記憶関数を求めることに成功した。
一方、ソフトモード乱流についてのLagrange的観点、すなわち混入した微粒子の非熱的なBrown運動の研究では、粒子に外力が加わっていない場合と外力によって揺らぎながら一方向に運動している場合で、記憶関数が異なることが明らかとなった。この揺動散逸関係の破れとも言うべき現象について、現象論的なLangevin記述によって考察を行った。
また、H26年度に予定していたソフトモード乱流のパターン秩序度の揺らぎについても進展があった。秩序度の磁場応答はこれまで直流磁場で行ってきたが、交流磁場に拡張して研究を行った。交流周波数が低いときは、通常の緩和型に近い応答が見られたが、周波数が高くなると、磁場による秩序化と系本来の無秩序化の間を間欠的に遷移し、秩序度が大きく揺らぐことが明らかとなった。これもあらたな揺動散逸関係であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で最も重要な、実験データから記憶関数を得るデータ解析の手法について、ソフトモード乱流に続いて欠陥乱流でもEuler的観点に対して成功している。Lagrange的観点の記憶関数については予定より遅れているが、あらたに重要な現象を発見しているので、全体としては順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

最終年度であるため、まずはLagrange的観点(非熱的Brown運動)の実験データについて記憶関数を求めることを最優先で行う。測定の制度を高める必要があるため、観測に使う微粒子の粒径や液晶セルの厚さなどについて検討する必要がある。
また、時空カオスによる拡散の性質をより深く調べるために、制御パラメータを時空カオスから発達乱流まで上げていったときの相関関数や記憶関数の変化を明らかにする。
H25年度に見つかった非熱的Brown運動と秩序度の磁場応答の揺動散逸関係については、実験だけでなくモデルの構築も行いながらより明快な知見が得られるよう研究を進める。

次年度の研究費の使用計画

研究成果を発表や研究議論のための旅費を計上していたが、他の研究者・研究機関の研究費から旅費が支出される機会が多く、本科研費の旅費の使用が予定より少なかった。
また、研究の進展の都合で取り組んだテーマの順番が変わり現有の物品で対応することができたことや、実験データ解析のためにソフトウェアを購入する予定であったが、現段階では現有のソフトウェアで対応できたことが理由である。
液晶電気対流の実験に必要な消耗品(液晶、電極付きガラスなど)に加え、Lagrange的観点(非熱的Brown運動)による測定に必要な粒径分散の小さな微粒子を購入する。適切な粒径を検討するために、何種類かの粒子を購入する予定である。また、時空パターンの観測で精度不足がの問題が生じたため、高精度の測定を行うための高解像度のCCDカメラの購入を検討している。H25年度に購入を見送った実験データ解析用のソフトウェアをH26年度には購入する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Duality of diffusion dynamics in particle motion in soft-mode turbulence2013

    • 著者名/発表者名
      Masaru Suzuki, Hiroshi Sueto, Yusaku Hosokawa, Naoyuki Muramoto, Takayuki Narumi, Yoshiki Hidaka, Shoichi Kai
    • 雑誌名

      Duality of diffusion dynamics in particle motion in soft-mode turbulence

      巻: 88 ページ: 042147-1-7

    • DOI

      10.1103/PhysRevE.88.042147

    • 査読あり
  • [学会発表] 回転場における乱流輸送の実験研究

    • 著者名/発表者名
      永岡賢一,吉村信次,寺坂健一郎,日高芳樹,横井喜充,政田洋平,三浦英昭,常田佐久,久保雅仁,石川遼子
    • 学会等名
      日本物理学会 2013年秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学
  • [学会発表] 液晶電気対流における欠陥乱流の時空揺動II

    • 著者名/発表者名
      三上洋輔,鳴海孝之,鈴木将,長屋智之,日高芳樹
    • 学会等名
      日本物理学会 2013年秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学
  • [学会発表] 回転系における乱流輸送の基礎実験

    • 著者名/発表者名
      永岡賢一,吉村信次,寺坂健一郎,日高芳樹,横井喜充,政田洋平,三浦英昭,常田佐久,久保雅仁,石川遼子
    • 学会等名
      日本物理学会 2013年秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学
  • [学会発表] クーロンブロッケイドネットワークで見られる非線形電流電圧特性の統計力学的理解

    • 著者名/発表者名
      鳴海孝之,鈴木将,平野義明,日高芳樹,松本卓也,甲斐昌一
    • 学会等名
      日本物理学会 2013年秋季大会
    • 発表場所
      徳島大学
  • [学会発表] 2つの2次元XY場によるソフトモード乱流の動力学モデル

    • 著者名/発表者名
      黒田敬穂, 日高芳樹, 鈴木 将, 岡部弘高, 原 一広
    • 学会等名
      第119回日本物理学会九州支部例会
    • 発表場所
      久留米工業大学
  • [学会発表] 時空カオスによる外力下の非熱的拡散

    • 著者名/発表者名
      惠島健, 日高芳樹, 鈴木将, 岡部弘高, 原一広
    • 学会等名
      第119回日本物理学会九州支部例会
    • 発表場所
      久留米工業大学
  • [学会発表] 液晶散逸構造のマクロゆらぎの相関関数と記憶関数

    • 著者名/発表者名
      日高芳樹,鳴海孝之,吉谷淳一,三上洋輔,鈴木将,長屋智之,原 一広
    • 学会等名
      新学術領域研究 ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立 第1回領域研究会
    • 発表場所
      KKRホテル熱海
  • [学会発表] 液晶散逸構造の秩序度と磁場応答

    • 著者名/発表者名
      飯野美里,Fahrudin Nugroho,日高芳樹,原一広
    • 学会等名
      2013年 日本液晶学会 討論会
    • 発表場所
      大阪大学 豊中キャンパス

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公開日: 2015-05-28  

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