研究課題/領域番号 |
24540412
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
全 卓樹 高知工科大学, 工学部, 教授 (60227353)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 量子グラフ / 量子フィルター / 量子素子 / 量子異常 |
研究概要 |
量子グラフを用いたスペクトルフィルターとして、外部よりの電圧印加によるコントロールが可能なタイプのものを考案した。これは量子散乱の一般論ではよく知られている「閾値共鳴散乱」現象を利用する事より達成された。 外線3本が一つの接点で交わる「N=3星状グラフ」の一本の外線(3とする)に一定のポテンシャルを加えた系を考え、接点を残る二本の外線(1および2とする)間の透過が極めて小さいようなFulop-Tsutsui型相互作用に選んでおく。すると外線1より入射した量子粒子は、ほとんどの入射エネルギーでほぼ全反射、ないしは反射と3への透過の組み合わせになるが、入射エネルギーがポテンシャルに等しい値の近辺にある時のみ「閾値共鳴」の現象によって1から2への透過がおこり、このときの透過率の最大値は1(完全透過)となる事実を解析的計算により発見した。ついで「N=4星状グラフ」の四本の外線(1、2、3、4とする)のうちで1から2への透過が極めて小さく3、4への透過が大きい「エキゾティックな」Fulop-Tsutsui型相互作用が選べる事を示した。これの外線3に一定のポテンシャルを加えた系を考え、外線1から外線2への透過をみると、入射エネルギーがポテンシャルに等しい値の近辺にまでは一定の程度(最大で1/4の透過率)の1から2への透過がおこり、ポテンシャルエネルギーを超えると急速にゼロになる事を発見した。ここでは外線4が一種のドレインとして働いている。 これらの系の精査とン=5以上への一般化も行い、実現可能性の高い量子トランジスター素子のモデルとしての「制御可能量子スペクトルフィルター」に道を開いたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
個別の系の手探りの検討から始めた研究であったが、初年度である平成24年度に、当初の大目標であった「制御可能な量子素子の祖型」としての量子グラフ系の提案を「閾値共鳴」という予想外の現象を用いて実現する事ができた。その系の数学的中小モデルを超えた実現可能性の検討も行い、さらには数学的一般化にも道を開く事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究成果である制御可能なこの系の詳細な性質の検討が今後の大きな課題に浮上した。これを当初の目標であった「量子素子の数学的一般理論の探求」、そして量子フィルターへの量子ホロノミー現象の応用をはじめとした応用発展の研究と並んで推進したい。 これまでは主に解析的研究が主であったが、本年度はより複雑な形状のグラフ系の研究にも注力するため、数値的研究に重きを置く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、数値的研究の推進のための高速電子計算機の購入に1/3ほどの予算を充て、1/3ほどを研究連絡や学会参加のための旅費、残り1/3を研究図書やソフトウェアをはじめとする消耗品と論文の出版比に当てる予定である。
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