複雑系のプロトタイプと言われるランダム磁性体「スピングラス」、その理論的研究は実験結果との矛盾等、初めから苦難の連続でした。それを象徴するのが「臨界線」存在の可能性です。本研究課題では、これを明らかにする過程で、数値計算上の困難を一つ一つ解決し、信頼に足る数値データから次の結論を得ました。 ①ハイゼンベルグスピングラス模型は、臨界指数等の対応する実験を矛盾なく説明できる。②先行研究で矛盾が存在した理由は「短距離・長距離相関のクロスオーバー」によること。③臨界線は、データの精度の問題で疑似的に見える。スケーリング補正の現れともいえる。また、今回開発した理論解析法はランダム系に広く応用が期待される。
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