研究課題
ストームグラスは、溶液内の結晶挙動の観察により天気予報に利用された歴史的器具である。本研究では温度変動下における結晶形状や析出量などの見た目の特徴の変化過程の理解が結晶成長学や形態形成の観点から興味深いと考えて実験的研究を行った。ストームグラスは5成分系(カンファー、エタノール、水、塩化アンモニウム、硝酸カリウム)のため、比較実験として3成分系(前者3成分)、2成分系(カンファー・エタノール)というシンプルな系も用いた。析出する結晶はカンファー結晶であり、濃度と平衡温度の関係(相平衡図)及び濃度と溶液密度の測定を行った。そして、周期的な温度変動を長期間与える実験を行い、結晶画像の解析を行った。試験管に析出して沈殿した結晶は、複数の層を形成した。これらの層の成因は、初期核形成による微結晶の集合体、その後の樹枝状成長、さらには、樹枝状結晶上方の溶液中における核形成による結晶の降り積もり、また、樹枝状成長と核形成過程の繰り返しにあることが分かった。これらの層ごとの層厚の時間変化の解析(多層解析)を行った結果、層はその起源により厚さが「一定」、「減衰」、「パルス的」、「振動」の4つに分類され、5成分系においてすべてが関与し、3成分では「一定」、「減衰」、「振動」、2成分系では「一定」、「減衰」項が関与するという成分数ごとの要素過程を見出した。さらに今年度は、層の境界の判定基準を明確に定義し直すことで、多層解析における解析者依存性の要素を排除した。また、太い試験管を用いた比較実験や短時間周期実験を行いその詳細を議論した。主たる成果は上述の多層解析の成果の通りであった。
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