研究実績の概要 |
歳差回転する球体の内部の流れの様相は、2つの無次元パラメター(レイノルズ数 Re とポアンカレー数 Po)で特徴づけられる。本研究では、この系の流れで最も基本的な特性のひとつである定常流がこの2つのパラメターのどの範囲に存在し、その構造がどのようになっているかを詳しく調べた。定常流の存在領域は、有限のパラメター値については流体方程式の数値シミュレーションで、またパラメター値の無限大の極限については漸近解析で求めた。その結果、(Re, Po)面上での定常流の存在境界は、Po=0.1825で Re が最小値 1010 をとり、Po << 1 では Po=21.25Re**{-4/5}なる漸近枝、Po >> 1 では Po=0.0084 Re**{2/3}なる漸近枝をもつことがわかった。この数値シミュレーションで、Re=1550, Po=0.165 の近傍で、速度場が不規則に反転するという興味深い現象を発見した。このメカニズムの解明は今後の課題である。次に、定常流の構造に関しては、歳差が強い極限 (Po >> 1, RePo >> 1) において球内全域で成立する表現を漸近解析で求めた。球面に沿って、厚さ O(δ)、δ=(RePo)**{-1/2}、の薄い境界層が現れること、この境界層の外部では流体はほぼ静止していること、また歳差軸に直交する大円の近傍では、境界層近似が破綻すること、そして境界層とは異なるスケーリング則に従う、いわゆる臨界帯の存在が現れること、さらに、臨界帯内部には、閉じた流線からなる1対の渦構造が存在することを示した。
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