研究課題/領域番号 |
24540417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
柳田 達雄 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (80242262)
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研究分担者 |
中尾 裕也 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (40344048)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 力学系 / 同期現象 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 非線形 |
研究概要 |
自然界には動的素子が非一様に相互作用して外乱に対して安定に機能するシステムが多く存在する. 例えば,細胞内における生化学反応や遺伝子発現では多数の機能分子が関与していながら安定なダイ ナミクスが創出されている.本研究は,所与された機能を実現するようにネットワーク型力学系の設計を行い,結合網構造と熱力 学的特性の関係性からノイズや環境変動に抗して 頑健なダイナミクスを出現させる数理構造を解明する. 1. 頑健な機能的ネットワーク型力学系の設計---これまでの研究成果を外部ノイズに対して頑健に同期するネットワーク型力学系の設計を行った.方法としてマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた.その結果,同期特性の優れたネットワーク型力学系が得られそのネットワーク構造を解析した結果,コアーハブ構造がノイズにいたいして頑健な力学となる事が明らかになった. 2. 設計アルゴリズムの探求---設計アルゴリズムとして幾つかのモンテカルロ法(パラレルテンパリング法・拡張サンプリング法など)を試みた.本研究では力学系の時間発展をする必要なためアルゴリズムの並列化が容易なパラレルテンパリング法が有効であることが分かった. 3. ノイズや環境変化に頑健なネットワーク型力学系の構造と熱力学的特性---WHAM法によりパラレルテンパリングにより得られたの異なる複数温度のサンプリング・データから状態密度関数を推定することにより様々な熱力学量を求めた.これにより,ネットワークのノード数が少ない場合には相転移を発見し,国際会議などで発表した. 4. 力学系が創出する機能として「時系列の統計的性質」を用いた研究を推進させネットワーク型力学系の応用を目指し,所与された周波数特性(パワースペクトル)を生成するネットワーク型力学系の設計を試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である所与された機能を実現するようにネットワーク型力学系の設計を「位相振動子の同期」行うことに成功し,ノイズに対して頑健なネットワーク型力学系の構造を明らかに出来た.このような,頑健なダイナミクスを出現させる構造はコア-ハブ構造であり,コア部が司令塔となりノイズ同期と類似した数理構造があると考えられ,頑健生を作り出していることを明確にでき,本研究の第一目標を達成できたと考えられる. 設計アルゴリズムの探求も幾つかのモンテカルロ法(パラレルテンパリング法・拡張サンプリング法など)を試みた結果,アルゴリズムの並列化が容易なパラレルテンパリング法の有効性を示した. また,ノイズや環境変化に頑健なネットワーク型力学系の構造と熱力学的特性をWHAM法によりパラレルテンパリングにより得られたの異なる複数温度のサンプリング・データから状態密度関数を推定することにより様々な熱力学量が得られ,この点においても研究は順調に進展していると考えられる. さらに,あらたな力学系が創出する機能として「時系列の統計的性質」を用いた研究を推進させた.力学系の統計的性質として様々考えられるが,周波数特性を記述するパワースペクトルを機能とし,先に達成された知見を活かして次年度に向けて順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
ネットワーク型力学系を設計するための基礎的なアルゴリズムパラレルテンパリング法(マルコフ連鎖モンテカルロ法)が本年度の研究によりほぼ確立されたので,これらの成果を用いて以下の課題を推進させる. 1.状態密度関数をWHAM法により推定して熱力学的特性を解明する.統計力学とのアナロジーから数理構造を解明する.特に,ノイズに対して頑健なネットワーク型力学系はノード数の小さい時には相転移的様相を示す事が予備的数値計算により明らかになりつつある.この相転移現象の数理的起源の解明する. 2.力学系が創出する機能として「時系列の統計的性質」を用いた研究を推進させネットワーク型力学系の応用を目指す.予備的数値計算では所与されたパワースペクトルを生成するネットワーク型力学系の設計に成功している.このような力学系の設計は,周波数特性を機能と見れば「ノイズ生成器」「信号生成器」としての応用の第一歩となろう. 3.有効自由度の大きな時系列を生成するため,予備的数値実験では位相差をもつ結合した位相振動子を用いている.電子回路などへの具体的な応用には,時間遅れを持つ結合型力学系の設計などが必要となり,より自由度の大きい力学系の設計が必要となろう.そのための方法論の開発(モンテカルロ法の有効な変数の取り方やムーブ法)も並列して行いながら研究を推進させる.
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次年度の研究費の使用計画 |
複雑な機能特性をしたネットワーク型力学系の設計は自由度が大きくなり可能性があるため,より複数台の計算機を用いた並列化が必要性がある.このため,現在用いている計算機クラスターの計算機ノード数を増強する必要がある.そのための予算を計算計上してある. 計算演算能力の強化と同時にシミュレーションから得られた大規模データを高速に保存する記憶装置の導入も必須である.特に,ネットワーク型力学系の構造データは大規模であるので高速で堅牢なRAID6型のHDDの導入する予定である.これらのシステムにより高速シミュレーションが実現できる. 国内外の研究者(フリッツハーバー研究所・Alexander Mikhailov教授)との研究情報の交換,また,共同研究者との頻繁な議論による研究推進のための旅費を計上する.
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