低エネルギーの電子衝突過程では,電子のde Broglie波長が長くなるため,量子力学的効果による特有の現象が現れる。従来の一般的な実験手法では困難な、超低エネルギー領域では,電子のde Broglie波長は原子・分子のサイズよりもはるかに大きくなる。このような電子衝突は電子Cold Collision(冷い衝突)と呼ばれ,量子効果が極めて明確に現れることにより,特異的な物理現象の発現が期待される。本研究は,種々の電子Cold Collisionの断面積測定により,極めてde Broglie波長の長い電子波と原子・分子との相互作用で発現する量子効果の探索を目的とするものである。 本年度は,種々の二原子分子および三原子分子について,極めて高いエネルギー分解能で全断面積の測定を行い、波長の長い電子波と分子の振動・回転運動の相互作用により発現する量子効果の探索を目指した。これまでの先行研究で開発した、超低エネルギー電子衝突全断面積測定装置を用いて、特に、O2分子およびCO2分子については、精密な測定の結果、形状共鳴による微細な構造を全断面積上に観測することに成功し、分子の振動運動の効果を定量化することが出来た。これらの成果について、国内外の学会で報告した。
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