研究課題/領域番号 |
24540424
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
宮本 洋子 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (50281655)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光の軌道角運動量 / もつれ合い / 量子情報 / ホログラム / 光子相関 / 国際研究者交流 / オーストラリア |
研究概要 |
本研究は経路干渉計法を用いた光子対の軌道角運動量もつれ合い状態検出の特徴を実験的に明らかにすることを目的としている。経路干渉計法は軌道角運動量重ね合わせ状態の検出手法の1つであり、従来法のホログラムシフト法と比べて対象外成分を効果的に排除することが特徴である。平成24年度は新規励起光源の導入に伴う光学素子の検討、実験系の設計の最適化、およびアライメント指針の検討による回転対称性の向上に取り組んだ。 光学素子の検討については、光子対の波長 810 nm に合わせてファイバ干渉計部品をモード関数径 5.5 μm の偏波保持ファイバに統一して設計し、新規部品の購入や現有部品の修理等を進めた。実験系の設計の最適化については、これまでの研究成果 [Kawase et al., J. Opt. Soc. Am. B (2009)] を活用して実験系のパラメタの検討を行った。アライメントについては励起光および光子対が全て同方向に伝搬する配置を採用して手順の簡略化を行い、アライメント精度を上げるための新タイプのファイバカプラの導入を検討した。 これらと並行して、ホログラム作製時の歪みを除去して回転対称性を向上させる方策に取り組み、ホログラムによって生成・検出されるビームの異方性を一桁減少させる手法について報告を行った [Miyamoto et al., Opt. Rev. (2013)]。ビーム断面内の位相分布を詳細に測定し、断面内のエネルギーの流れの分布やそれによって生じる角運動量を定量的に評価する方法を確立した [Miyamoto et al., J. Opt. (2013)]。また、複屈折結晶中で光渦が複雑な偏光分布に発展する様子を観察するために、複屈折干渉計を用いた実験系の提案・実証を行った [Brundavanam et al., Opt. Express (2012)]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画として掲げた光学素子の検討、実験系の設計の最適化、回転対称性の向上のいずれについても十分な成果があり、平成25年度の計画である実験系の組み立てに着手が可能である。特に回転対称性の向上については、アライメントだけでなくホログラムの歪み除去についても進展があった。 ビーム断面内の位相分布の詳細測定や、複屈折結晶中(本研究のパラメトリック蛍光源も複屈折結晶を用いたものである)での光渦の振舞いの観察手法についても研究成果を上げている。これらは今後の実験系の改良に役立ち、また光子の軌道角運動量状態について発展的な研究を将来行う上で重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の主な変更は Molina-Terriza 氏(海外研究協力者)の来日時期の平成24年度から25年度への変更である。 平成25年度:前年度の検討結果をもとに実験系を組み立て、光源部、検出部、アライメント手法のそれぞれについて期待される性能が出ているか確認し、必要な修正を行う。パラメトリック蛍光光子対について軌道角運動量の古典的な相関を確認した後、もつれ合い状態の検出を行う。光子対の両方にホログラムシフト法を用いる両ホログラムシフト法と、一方にホログラムシフト法、他方に経路干渉計法を用いるハイブリッド法の比較を行う。次年度の両経路干渉計法および Einstein-Podolsky-Rosen 型の実験のための検討を開始する。秋に Molina-Terriza 氏を招へいし、この時点までの実験系の組み立て・評価結果を踏まえて議論を行う。 平成26年度:これまでに得られた知見を生かし、光子対の両方に経路干渉計法を用いる両経路干渉計法によるもつれ合い検出を行う。実現のためには干渉計の安定性の向上がポイントとなる。さらに高度な実験として、経路干渉計法を2つの排他的な結果のどちらかを与える2出力の検出器として用い(2出力経路干渉計法)、これを光子対の両方に用いることで完全な Einstein-Podolsky-Rosen 型のもつれ合い状態検出実験を行う。また、研究全体のまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額721,828円が生じた主な原因は Molina-Terriza 氏(海外研究協力者)の来日時期を平成24年度から25年度に変更したこと、および現有部品の活用等のファイバ干渉計部品の見直しである。平成25年度請求額と合わせて次年度は1,721,828円を使用する。 物品費(571,828円):実験系の組み立て・評価結果を踏まえて、実験系の改良および両経路干渉計法への拡張のための光学部品・ホログラム作製材料等を購入する。 旅費(1,000,000円):国際会議での招待講演2件(チェコ、ウクライナ)のための渡航を予定している。また Molina-Terriza 氏を平成25年秋に招へい予定である。この時点までの実験系の組み立て・評価結果を踏まえて議論を行う。 その他(150,000円):論文投稿費に使用する。
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