研究課題/領域番号 |
24540424
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
宮本 洋子 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (50281655)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光の軌道角運動量 / もつれ合い / 量子情報 / ホログラム / 光子相関 / 国際研究者交流 / オーストラリア |
研究実績の概要 |
本研究は経路干渉計法を用いた光子対の軌道角運動量もつれ合い状態検出の特徴を実験的に明らかにすることを目的としている。経路干渉計法は軌道角運動量重ね合わせ状態の検出手法の1つであり、従来法のホログラムシフト法と比べて観測基底から対象外成分を効果的に排除することが特徴である。平成26年度は外部共振器付き半導体レーザーによる新しい励起光源の作製・評価を行い、ハイブリッド法や両経路干渉計法の実験に向けてホログラムやファイバー干渉計部品の整備を進めたが、もつれ合い状態検出実験は行わなかった。 ハイブリッド法は光子対の一方に経路干渉計法、他方にホログラムシフト法を用いるもつれ合い状態検出手法、両経路干渉計法は光子対の両方に経路干渉計法を用いる手法である。これらの手法によるもつれ合い状態検出を目指して研究を進めている[Miyamoto, LPHYS '14 (2014)]。 実験に必要なコヒーレンス長を確保するため、前年度の検討をもとに外部共振器付き半導体レーザーによる新しい励起光源を作製し、評価を行った。予定していたパワーとコヒーレンス長の両方を確保することが難しいことが分かり、方策を検討中である[舘野 他、Optics and Photonics Japan 2014 (2014)]。 ホログラムについては前年度に引き続き新しい電子線露光装置やホログラム材料について電子線照射条件と加工深さの関係の検討を行い、必要な加工深さの算定式についても検討を行った[亀井 他、Optics and Photonics Japan 2014 (2014)]。 これらと並行して、複屈折結晶中で一様な光渦が複雑な偏光分布に発展する過程について解析を進め、発展の段階を表す定量的な指標について考察した [Brundavanam et al., Photonics 2014 (2014)]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は外部共振器付き半導体レーザーによる新しい励起光源を作製し、これを用いて生成したもつれ合い光子対に対して、両ホログラムシフト法とハイブリッド法によるもつれ合い状態検出の比較を行い、さらに両経路干渉計法の実験に着手する計画であった。このうち、外部共振器付き半導体レーザーの作製を行い、ハイブリッド法や両経路干渉計法の実験に向けてホログラムやファイバー干渉計部品の整備を進めたが、もつれ合い状態検出実験は行っていない。 もつれ合い状態検出実験に至らなかった理由の1つは、新しい励起光源について、予定していたパワーとコヒーレンス長の両方を確保することが難しいことが分かったためである。レーザーの改良ともつれ合い状態生成および検出系の設計変更を平行して進めている。 2つ目の理由は、ホログラム作製に使用する新しい電子線露光装置の加工特性が安定しない現象が見られたためである。装置の汚れが原因であることが判明し、最終的には電子線照射条件と加工深さの関係について、ホログラム作製に十分なデータを得ることができた。 以上から、研究の進行は遅れているが、問題点は解消しつつある。関連した研究である複屈折結晶中の光渦の振舞いの観察手法についても解析手法について進展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の主な変更は、新しい励起光源で実現可能なパワーとコヒーレンス長の組み合わせを見きわめた上で、もつれ合い状態生成・検出系の設計変更を行い、新しい設計による装置で平成26度に予定していた計画の完遂を目指すことである。 平成27年度:外部共振器付き半導体レーザーによる新しい励起光源について、実現可能なパワーとコヒーレンス長の組み合わせを見きわめた上で運用条件を確定する。この条件を踏まえてもつれ合い状態生成・検出系の設計変更を行う。新しい励起光源を用いてもつれ合い光子対の生成を行い、まず軌道角運動量の古典的な相関の確認と両ホログラムシフト法の実験を行う。次に光子対の一方に経路干渉計法を導入してハイブリッド法によるもつれ合い状態検出実験を行い、両ホログラムシフト法との比較を行う。さらにもう一方の光子にも経路干渉計法を導入し、両経路干渉計法によるもつれ合い検出に着手することを目標とする。両ホログラムシフト法で観察される観測基底中の対象外成分の影響が、ハイブリッド法と両経路干渉計法で排除されることを確認し、研究全体のまとめを行う。 余裕があればさらに高度な実験として、完全な Einstein-Podolsky-Rosen 型のもつれ合い状態検出実験に着手する。この実験では経路干渉計法を2つの排他的な結果のどちらかを与える2出力の検出器として用い(2出力経路干渉計法)、これを光子対の両方に用いてもつれ合い検出実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額526,951円が生じた主な原因は、購入を予定していたファイバー干渉計部品等について、別の予算から支出することが可能となったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は526,951円を使用する。 物品費(76,951円)は実験系の改良のための光学部品を購入する。旅費(400,000円)は国際会議での成果発表(フィンランド)のための渡航を予定している。その他(50,000円)は国際会議参加費として使用する。
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