研究課題
本研究は、極端紫外強レーザー場における原子や分子の多光子多重電離過程を明らかにすることを目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、理化学研究所のX線自由電子レーザーSACLAを利用し、希ガスの多光子多重電離過程に対する光電子分光実験を実施した。キセノンに5 keV程度のX線パルスを集光したところ、多光子吸収による多価イオン生成に対応すると考えられるスペクトル構造を見出した。さらに、その多光子吸収を引き起こしているイオン状態についての詳細な情報をえるために、電子-イオンコインシデンス計測を試行した。レーザー場強度が10^14 W/cm^2以下の条件下での測定に対しては、良好なコインシデンス信号を観測することができ、この実験によって初めてX線自由電子レーザーで電子-イオンコインシデンス計測が可能なことを実証できた。一方、このレーザー強度では十分な非線形過程は見られず、イベントレートを抑えつつ、さらに集光強度を上げた実験を行うことが必要であることが分かった。この問題は実験チャンバーのベース圧力を下げることにより解決可能であり、技術的に大きな問題はない。そのため、平成26年度の研究において有効な電子-イオンコインシデンス計測を実施できるものと考えている。さらに、光学レーザーの併用実験も実施し、極端紫外強レーザー場における原子や分子の多光子多重電離過程に対する広範な知見を得ることを目指す。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、希ガスの多光子多重電離過程に対する光電子分光実験により新しい知見が得られており、また幾つかの成果について論文発表を行った。
平成25年度までの実験で得られたデータの解析とその成果の発表を行うとともに、希ガスの多光子多重電離過程に対する光電子分光実験をさらに推進する。
当初予定していた旅費額よりも安価に執行することが出来た為。真空部品を購入する予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Physical Review A
巻: 88 ページ: 063422
DOI: 10.1103/PhysRevA.88.0634222
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DOI: 10.1103/PhysRevA.88.023421
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