研究課題/領域番号 |
24540427
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 量子測定 / 量子相関 / 量子プロセス / 弱値 / 非可換物理量 / 量子トモグラフィー / 量子複製 / 複素結合確率 |
研究概要 |
1.量子システムの可逆的な変換を表す複素条件付き確率によって、異なる弱測定の結果が関係づけられることを示した。したがって静的な相関と非古典的効果の原因を説明する変換による動力学との関係は、弱測定によって立証されることになる。 2.任意の相互作用の強さでの非可換物理量の連続測定を行うことによって、測定の反作用と測定の誤差との関係を調べ、以前から弱測定で観測された正ではない確率分布の観点から実験データを説明できることを示した。 3.量子複製は結果的に複製物間の非古典的相関を与えるとともに、その相関は単一システムの弱測定で観測される非可換性の相関と対応することを示した。そのことは弱測定の統計性は、状態準備や測定では制御できないシステムのまさに量子特性を正しく記述していることを示している。 4.ヒルベルト空間形式は、演算子オブサーバブルの間の基本的な関係を記述する複素条件付き確率から説明可能であることを示した。大事な事は、これらの関係は物理の古典的法則を記述する数学的関数の修正として理解できることにある。量子力学は、古典的位相空間上の点で表す測定と独立な実在性を複素条件付き確率によってお互い一義的に関係づけられる別の実験的実在性に置き換えているように見える。 5.さらなる結果としては、相関のあるホモダイン検出によってエネルギーと時間の光子のもつれ合いを明らかにする新しい方法、偏光制御の二光子干渉を利用したエネルギーと時間の複素結合確率の弱測定の提案、単一原子における非共鳴での非線形性の特性評価、そして微小な相互作用パラメータ見積もりでの弱値の増大から得られる感度の実験的な評価などが挙げられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
弱測定の統計性の解析について、多くの進展があった。新しい結果は、量子効果の起源のさらに詳細な理解に向けて大変重要なブレークスルーであるとともに、当該研究分野の発展に重大なインパクトを持つものとなるだろう。特に、複雑なシステムやプロセスにおいて複素確率が量子コヒーレンスをうまく説明するという発見は、量子と古典の統一した枠組みの中での非古典的効果のより良い直観的な理解に向けての方法を指し示している。
|
今後の研究の推進方策 |
1.弱値と複素数統計を利用したもつれ合い状態が関与する非古典的相関の研究。特に部分転置によるもつれ合い基準が二体システムの虚数の弱値の相関と同一とみなせる可能性があると思われる。 2.複素条件付き確率によって記述される物理的特性同士の間の基本的関係に基づいた一般的な量子力学の定式化。特に弱測定で観測される複素条件付き確率と状態ベクトルの確率振幅との対応関係は一般化できるはずである。 3.不確定性限界のさらに本質的な定義を見つけることを目的とした、さまざまな状況(パラメータ見積もり、状態、測定)における不確定性の研究。特に複素数統計によって定義される正と負の確率の間の境界という観点から、すべての不確定性は説明できると思われる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、旅費、研究会参加費、雑誌の論文掲載費、事務用品費、計算機のハードウェアとソフトウェアの経費にあてる予定である。
|