研究課題/領域番号 |
24540428
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
飯沼 昌隆 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (00294512)
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キーワード | 量子測定 / 弱測定 / 測定の強さ可変測定 / 光子対 / 複素結合確率 / 偏光 / 変形サニャック干渉計 |
研究概要 |
今年度は下記の3点について成果があった。 1)もつれ合い光子対発生源の改良: 発生光子対のカウント数を前年に比べ一桁以上30,000/secのカウント数を得た。さらに光子対をシングルモード光ファイバーと結合させ、2,000/secのカウント数を得ることに成功した。この結果より文脈依存性の実験の光子対源として使用可能なレベルにまで達することができた。 2)弱測定装置の改良と複素数確率分布の測定: 偏光ビームスプリッターとビームスプリッターを融合したハイブリッド素子を特注し、その素子による干渉計を構築することで安定性向上に成功した。この装置を使って結合確率の測定を行い、測定装置が光子の偏光状態に与える影響を測定の不確定性として評価できた。さらに測定した結合確率分布から測定装置の影響を通常の確率論を使って排除することで、量子論の式を使わずに測定前の複素数の結合確率分布を求めることに成功した。これは量子論で議論されている疑似確率分布が、量子論とは独立に実験的に求まったことを意味する。その結果、量子論のカークウィッド型の確率分布による予想値とほぼ一致した。ところがハイブリッド素子が偏光状態に与える系統的な位相のズレが大きいことが判明し、複素確率分布の虚部の系統的誤差が無視できないことが分かった。 3)理論的考察: 我々の弱測定セットアップと本来Aharonovたちが提案したVon Neumann相互作用による弱測定との隔たりが以前から指摘されていた。この点について、Extended weak valueと呼ばれる広い概念の弱値を導入することで、我々の弱測定がAharonovたちの弱測定と一致することがわかった。このExtended weak valueの導入によって、もつれあった状態など一般の量子状態にも適用可能な弱測定の理論が構築できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回は特注品であるハイブリッド素子を使って複素数確率の測定を行ってきたが、この光学素子の偏光状態の虚部に与える系統的な影響が思った以上に大きかったことが研究の遅れの最大の理由である。水平方向の直線偏光状態、垂直方向の直線偏光状態は非常に高い精度で位相の制御が可能であるが、楕円偏光の入力に対しては、素子が与える系統的な位相のズレがかなり大きいことが分かった。当初の計画を変更して、この光学素子についてのみ系統的な測定を行った。測定の結果、系統的位相のズレが一方の反射面で210°、もう一方の反射面で150°に及ぶことがわかった。この素子の影響を調べる測定と複素確率分布の系統誤差を最小限に抑えるための装置の調整に手間取り、当初の予定以上の時間がかかってしまった。そのため複素数確率の測定に成功はしたものの、虚部に関してはまだ十分に系統誤差を抑えきれない結果となった。しかしながら系統誤差の原因と素子による系統的位相のズレを抑える方法に目途がついたため、次年度以降の実験に確実につながる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、今年度の結果を基に偏光状態の虚部に与える系統誤差を下げるように装置の改良と解析方法の改良を行う。それができれば、ただちに精度の良い量子状態の複素数確率の測定と解析を行うことができる。さらに複素数確率の測定の装置はそのまま文脈依存性の実験やもつれ合い光子の実験に使うことができる。低い系統誤差を実現した実験セットアップに、今年度改良した光子対発生源を光源にすることで、文脈依存性の実験を開始することができる。この実験によって文脈依存性の逆説の問題を実験的に解決できるだけでなく、二光子の偏光状態の制御と測定ノウハウも蓄積できる。今年度の早いうちから実験を始めて、今年度の半ばぐらいまでには実験を終了させたいと考えている。また文脈依存性の実験と同時並行して、これまで得たノウハウを踏まえて新たにもつれ合い光子対発生源の立ち上げたいと考えている。 文脈依存性の実験が終了し、もつれ合い光子対発生源の準備が整えば、本研究の最終目標のもつれ合い光子対の弱測定の実験を始めることができる。遅れ気味であるが、弱測定のセットアップの動作は実証済みであるため、光源の準備が整い次第、直ちに実験を始めることが可能である。今年度の後半には実験を始めて、今年度の終わりには最初の結果を出したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は物品費が主な支出であったが、端数として比較的少額の当該助成金が発生してしまった。 翌年分の助成金と合わせて、光学部品などに使用予定である。
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