研究課題/領域番号 |
24540433
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒木 武昭 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20332596)
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研究分担者 |
小貫 明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90112284)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ネマティック液晶 / 多孔質 / トポロジカル欠陥 / 非線形流動 / 相転移現象 / メモリー効果 / アンカリング効果 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
ネマティック液晶を多孔質に封入した系において、単純なセルに封入した場合に見られる弾性力による早い緩和とは別に、遅い緩和とそれに由来するメモリー効果が現れることが知られている。我々は以前、Lebwohl-Lasherポテンシャルを用いたモンテカルロシミュレーションによって、この遅い緩和が、熱的に誘起されたトポロジカル欠陥の組換えによるものであることを示した。本研究課題では、多孔質に閉じ込めたネマティック液晶の流動特性を数値的・理論的手法を用いて調べることを目的とし、特に、トポロジカル欠陥の多重安定性に関わる非線形・非平衡流動現象に焦点を当て研究を行った。 格子ボルツマン法による数値シミュレーションの結果、多孔質の構造によってトポロジカルに拘束されたものとそうでないものの二種類の欠陥が存在するが分かった。流れが小さい場合には、欠陥は分子の回転運動によって流れに逆らい、自由エネルギー的に安定な元の位置が保持される。流れが大きくなると、トポロジカルに拘束されていない欠陥が動き出すようになる。さらに流れを強くすると、拘束された欠陥も組み換えながら運動するようになった。トポロジカル欠陥のメモリー効果により、流動特性も記憶される。また、欠陥構造を制御することにより、多孔質中の流れの経路を制御できることも示された(H24)。Ericksen-Leslie-Parodi式による解析の結果、流れによる欠陥の組換えはバルクの特性だけでなく多孔質壁面のアンカリング効果が大きく影響することが分かった(H25)。 最終年度は、多孔質中の液晶系に対する電場の影響を調べるべく、理論モデルの構築を行い、特に相転移温度より高い等方相での振舞を調べた。電場を徐々に強くしていくと、多孔質壁面のうち曲率の高い領域にネマティック相が出現することが分かった。この局所的なネマティック領域は系全体の光学・電気物性にも影響する。
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