研究概要 |
本研究の申請書で述べたとおり、本研究で先ず解決するべき問題は実験技術の改良であった。本研究では緩和時間の温度変調に対する複素感受率を測定するが、申請に至るまでの予備的実験では、その位相が不安定さが大きな問題であった。試料作成法、検出器への取り付け法などの詳細な検討と、種々のデータ処理結果の検討を行った結果、温度変調用ヒーターと試料との間の熱移動が問題の中心であることが突き止めた。ヒーターによる発熱と試料による吸熱の時間差を0にすることは不可能であるが、モデルに基づく理論解析によりデータ補正を行うことができることを明らかにした。現在は、この理論モデルの改良を進めている。なお、予備的段階の実験結果については論文として報告した。(当該年度の成果ではないのでここに記載する。Akihiro HARADA, Takashi OIKAWA, Haruhiko YAO, Koji FUKAO, Yasuo SARUYAMA, Journal of the Physical Society of Japan, Short Notes, vol. 81. 065001 1-2 (2012), DOI: 10.1143/JPSJ.81.065001) 申請者らがtau_tauと呼ぶ「緩和時間の緩和時間」のモデルについては、以前から協力関係にある小田垣孝教授(東京電機大学、九州大学名誉教授)と議論を進めている。そこで検討された結果の一部は、小田垣教授との共著で、論文として発表した。(研究発表の項目参照) 以上に述べた実験的および理論的研究については、2013年7月にバルセロナ(スペイン)で行われる、第7回 International Discussion Meeting on Relaxations in Complex Systems において、招待講演として発表予定である。
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