研究概要 |
平成25年度の研究では、二つの大きな成果が得られた。第一成果は2013年7月にバルセロナ(スペイン)で行われた、第7回 International Discussion Meeting on Relaxations in Complex Systems (7th IDMRCS)における招待講演である。昨年度の報告書で述べたように、温度変調非線形誘電測定法の実験装置およびデータ解析の技術的改良を進めた結果、報告者らがtau_tauと呼ぶ「緩和時間の緩和時間」の温度依存性について、予備段階(A. HARADA, T. OIKAWA, H. YAO, K. FUKAO, Y. SARUYAMA, J. Phys. Soc. Jpn, Short Notes, vol. 81. 065001 1-2 (2012), DOI: 10.1143/JPSJ.81.065001)よりも広い温度域で信頼性の高い結果を得ることができた。 第二の成果はデータ解析法の大きな進歩である。温度変調法は熱拡散で試料の加熱をするため、変調周波数が狭い範囲に限られるという制限がある。これを克服するため、新しいデータ解析法を確立した。この方法で緩和時間の評価の信頼性が大きく改善され、tau_tauの温度依存性がより詳細に求められるようになった。これまでに、tau_tauで特徴づけられる過程は協同性が弱いという予想外の結果が得られており、ガラス転移の理解に大きく貢献することが期待される。現在、この方法に基づいた測定をさらに進めているが、途中経過を2014年6月にロストク(ドイツ)で行われる、Laehnwitzseminar 2014 で発表予定である。tau_tauの理論的モデルについては、小田垣孝教授(東京電機大学)と議論を進めている。
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