研究課題/領域番号 |
24540439
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
好村 滋行 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90234715)
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研究分担者 |
関 和彦 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (60344115)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生体膜 / 膜タンパク質 / ブラウン運動 / 異常拡散 / マイクロレオロジー |
研究概要 |
本研究では、多成分生体膜における動的な不均一構造の物理的起原を、周囲の溶媒も含めた流体力学的効果および粘弾性効果を詳細に検討することによって解明することを目的としている。平成24年度は、主にバルク溶媒の粘弾性効果について調べた。そのため、周囲の溶媒の粘性率は定数ではなく、周波数の関数として扱った。具体的には、粘性が周波数の冪関数になる場合と、マクスウェルモデルに従う場合について考察した。我々は、流体膜と溶媒を記述する流体力学方程式を時間依存性も含むストークス方程式に拡張して、波数と周波数に依存する易動度テンソルG[k,ω]を導出した。原理的にはこの一般化された易動度テンソルを用いて、流体膜上のダイナミクスに対する溶媒の粘弾性効果を議論することが可能となる。しかし、このようにして求まる一般化易動度テンソルを解析的に扱うのは困難であるため、24年度は流体膜と壁の距離が十分に小さい極限を考えた。この場合は、物理的に固体基板に支持された脂質二重膜中のダイナミクスを考察することに対応し、脂質二重膜中の運動量は固体基板との摩擦によって散逸することになる。これまでに、膜中に埋め込まれた半径Rのディスクの、周波数に依存した拡散係数を求めた。その結果、周囲の溶媒の粘弾性効果によって、生体膜中では異常拡散が見られることを予測した。これは、近年の膜タンパク質のブラウン運動の実験結果とも一致する。我々が導出した結果は、生体膜中の一粒子マイクロレオロジーの実験に対して有益な情報となる。また、球状ベシクル上のドメイン成長についても考察した。我々は球面上でのドメインの衝突頻度を導出し、さらにスモルコフスキーの理論を用いて、ドメインの時間依存性を解析的に導出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
周囲の溶媒の粘弾性効果を考慮して、生体膜の波数と周波数に依存する易動度テンソルを導出したため、平成24年度の目標はほぼ達成した言える。さらに、膜と基盤の距離が小さい場合については、粒子の平均自乗変位を解析的に計算して異常拡散を示すことが導かれたので、研究は全体として順調に進行しいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、運動量の散逸が強い条件下で、易動度テンソルから二粒子間の相関拡散係数を計算する。また、生体膜自体が粘弾性効果をもつ場合についても考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も数値計算や簡単なシミュレーションを行なうため、ワークステーションやパソコンを購入する予定である。また、本研究で得られた成果は7月に韓国で開催されるSTATPHYS25や、9月にイタリアで開催されるInternational Soft Matter Conference 2013で発表するため、外国出張旅費が必要である。
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