研究課題/領域番号 |
24540440
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
奥薗 透 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10314725)
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研究分担者 |
山中 淳平 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80220424)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 荷電コロイド / 弱電解質 / コロイド結晶 / 数値シミュレーション |
研究概要 |
本研究の目的は、弱塩基のコロイド粒子表面への静電的吸着反応を考慮したモデルを提案し、塩基拡散による結晶化の物理的メカニズムを解明することにより、一般の荷電コロイド系における弱電解質の拡散および反応を含む輸送現象に関する物理的理解を得ることである。 本年度は、荷電コロイドの重力沈降のモデルとして我々が構成した粗視化モデルを拡張し、弱塩基の静電的吸着反応の影響を取り入れたモデルを構築した。このモデルを用い、非一様な塩基濃度場の下で数値シミュレーションを行った結果、コロイド粒子の濃度分布は、静電的吸着反応により生じる電荷数の変化に強く影響されることがわかった。 上記のシミュレーション結果は、定常状態における荷電シリカコロイドの2次元イメージ分光の実験結果と定性的な一致を見たが、過渡的なダイナミクスに違いが現れた。この原因のひとつとして、拡散泳動の効果が考えられる。弱電解質の拡散による荷電コロイド粒子の泳動効果に関する研究はほとんどされておらず、理論的な検討が必要である。 不均一な塩基濃度場中では、コロイド粒子表面での電荷分布が一様でなくなる可能性があるが、上記のモデルではこれを考慮していない。粒子表面での電荷分布が粒子のダイナミクスに及ぼす影響を調べるため、高分子電解質溶液に関する連続体モデルを援用し、塩基拡散場中の電荷をもった相分離ドメインのダイナミクスに関する数値シミュレーションを行った。その結果、塩基拡散場中で非一様な電荷分布が形成され、それによって相分離ドメインが泳動することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロイド粒子密度を連続体として表現した粗視化モデルに弱塩基の粒子表面への静電的吸着の効果を取り入れたモデルを構築し、定常状態でのコロイド結晶構造に対しては、粒子の電荷数が支配的な因子であることを示した。これは、シリカコロイドの実験結果を定性的に説明している。また、高分子電解質溶液のモデルから得られた結果は、弱電解質中のコロイド粒子のダイナミクスに関する重要な知見が得られた。これらの結果から、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、弱電解質中の荷電コロイドのダイナミクスにおいては、コロイド粒子表面における電荷およびイオンの分布が重要であることがわかってきた。今後は、これらの自由度がコロイド粒子の作るマクロな構造にどのように反映されるのかについて考察し、モデル化する。また、これまでのところ実験との定量的な比較が不十分であるので、比較可能なパラメータを精査し、シミュレーションとの定量的な比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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