研究課題/領域番号 |
24540440
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
奥薗 透 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10314725)
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研究分担者 |
山中 淳平 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80220424)
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キーワード | 荷電コロイド / 弱電解質 / コロイド結晶 / 数値シミュレーション |
研究概要 |
本研究の目的は、弱塩基の濃度勾配下における荷電コロイドのダイナミクスを記述する連続体モデルを構築し、弱塩基拡散場中における荷電コロイドの結晶化のメカニズムおよび解離反応を伴う電解質の輸送現象に関する物理的理解を得ることである。 本年度は昨年度につづき、荷電コロイドの連続体的記述に関する知見を得るため、弱塩基拡散場中における高分子電解質ドメインのダイナミクスを記述するモデルを構築した。このモデルでは非一様な電荷分布をもったドメインのダイナミクスのシミュレーションが可能である。また、コロイドサイズでは流体力学的な効果がダイナミクスに影響を与える可能性があるため、流体力学を考慮して速度場を導入した。 上記のモデルに基づいて、非一様な弱塩基濃度場中での高分子電解質ドメインのダイナミクスに関する数値シミュレーションを行った。その結果、弱塩基濃度勾配下において電解質ドメインが移動することが確認できた。移動の方向は高分子の拡散係数と相対的な粘度(ペクレ数に相当)によって反転することが分かった。また、相対的に粘度が低い場合には、ドメインが大きく変形することも示された。 以上の結果は、弱塩基濃度勾配下において生じる非一様な電荷分布が、高分子電解質ドメインを駆動し、流体力学的モードと結合することを示唆している。このことは、弱塩基勾配下における荷電コロイドのダイナミクスを検討する上での重要な知見であると考えられる。 また、温度勾配下における荷電コロイドの結晶化についても実験的に検討し、温度勾配によって誘起される非一様な電荷分布が結晶化過程のダイナミクスに顕著な影響を及ぼすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
荷電コロイド粒子系のダイナミクスを粒子レベルで記述する連続体モデルの構築に向けて、高分子電解質ドメインのダイナミクスのモデルによる数値シミュレーションを行い、非一様な電荷分布により流体力学的モードが誘起されることを示した。このモデルにおいて強偏斥の極限で剛性をもつような場合には、コロイド粒子系と同じ振る舞いが期待されるので、この結果は、今後、非一様な弱塩基濃度場中の荷電コロイド粒子系のダイナミクスを考察する上で重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、単一のドメイン内およびその周辺の非一様な電荷分布が流体力学的なモードを誘起し、ドメインの移動に寄与することが分かった。今後は、高分子電解質ドメインがコロイド粒子と見なせるような極限でのダイナミクスを考察する。また、多数のドメイン/粒子がある場合の集団的な運動について議論し、実験との比較を行う。
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