研究課題
平成25年度は、前年度のタンパク質の繊維化のシミュレーションとその解析を進めると同時に、細胞接着ペプチドのシミュレーションによる研究を進めた。平成24年度に購入した計算用コンピュータを使って計算した。また平成25年度に購入した解析用コンピュータを用いて解析を行った。タンパク質の繊維化に関しては、全原子の分子動力学シミュレーションの結果から、インターフェース内の疎水性アミノ酸が多いほど、また、電荷アミノ酸の数が多いほど、タンパク質結合がよく起こる傾向が見られた。また導入したロイシンが結合によって分子間内側に埋没していく時間変化が追跡できた。ラミニンは細胞接着に関係したタンパク質であるが、このラミニンの一部を取り出した配列を持つペプチドに関して、シミュレーションを行った。その結果、このA2G80ペプチドは、水和状態で比較的安定した構造を維持することがわかった。エネルギー最小状態の構造は、βシート様構造をとることがわかった。またこのペプチドのアミノ酸をアラニンに置換してシミュレーションを行った所、Try9を置換したY9ペプチドに大きな変化が生じることがシミュレーションでわかった。Y9ペプチドはA2G80と同様に、βシート様構造を形成する一方で、N, C末端が反り返り、αヘリックスを内包する構造を形成することが分かった。さらに、βシートを形成する水素結合に着目し、A2G80およびアラニン置換ペプチドにおける水素結合間距離を解析した所、Y9ペプチドは、どの水素結合距離も大きな値を示した。これから、Tyr9がA2G80の構造決定に重要であることがわかる。このように、1個のアミノ酸を変えることにより、ペプチドの性質が大きく変わる点が、高分子とは異なる性質である。高分子ゲルの計算も合わせて進行中である。またA2G80のシミュレーション結果の実験結果との比較も進行中である。
2: おおむね順調に進展している
1当初の計画通り、細胞接着ペプチドに関して、シミュレーションを用いた研究が進み、学会発表を行い、英文査読付論文として出版された。
1 平成24年度、平成25年度に得られた結果を元にさらに研究を進めると同時に、糖尿病ペプチドのシミュレーションに関して重点的に研究を行う。食事後に血糖が上昇すると、血糖を低下させるホルモンのインスリンがすい臓から分泌される。インスリンの働きが弱ると糖尿病になるが、このインスリンの働きを促進する役割を持つのがインクレチンと呼ばれるホルモンであり、糖尿病の治療薬として注目されている。具体的には、GLP-1、GIPと呼ばれるペプチドが検出されている。これらのうち、GLP-1にターゲットを絞り、安定構造や構造変化についてシミュレーションを用いて研究する。シミュレーションに関しては、平成24年度に購入した計算用コンピュータを使う。解析に関しては、平成25年度に購入した解析用コンピュータを使う。研究の過程において、他大学の研究者を招聘して、セミナーを開催し、専門的知識の提供を受ける。3年間の成果を学会で発表し、英文論文にまとめて投稿する。
2013年度に分担者の宮川毅助教が国際会議で研究発表をする予定であったが、2014年度に発表することになり、その分の約31万円を2014年度に繰り越した。繰り越した31万円は、宮川毅助教の海外(イタリア)における国際会議での発表のための旅費および滞在費にあてる予定である。元々の使用予定額は、当初の計画通り、代表者や分担者や研究協力者の旅費などに充てる予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (6件)
Mol. Sim.
巻: 40 ページ: 498-503
10.1080/08927022.2013.824571
Mol. Phys.
巻: 112 ページ: 526-532
10.1080/00268976.2013.852697
JPS Conf. Proc.
巻: 1 ページ: 016019
10.7566/JPSCP.1.016019
巻: 1 ページ: 016010
10.7566/JPSCP.1.016010
巻: 1 ページ: 016016
10.7566/JPSCP.1.016016
巻: 1 ページ: 016020
10.7566/JPSCP.1.016020
巻: 1 ページ: 016006
10.7566/JPSCP.1.016006
Peptide Science
巻: 2013 ページ: 289-292
巻: 2013 ページ: 285-288.
Prog. Theor. Chem. Phys.
巻: 27, ページ: 351-360
10.1007/978-3-319-01529-3_19