研究実績の概要 |
本研究の目的は、固液界面に吸着したタンパク質の2次および3次構造をリアルタイムで可視化するための装置を開発することである。2次構造の検出には全反射赤外分光法(ATR-FTIR)、3次構造の検出にはX線反射率法(XRR)を用いる。秒オーダーの時間分解能で固液界面に吸着したタンパク質の立体構造を観測することを目指す。そのためにエネルギー分散型X線反射率装置(ED-XRR)を新規に立ち上げ、23年度に近畿大学の研究費で購入したATR-FTIRと組み合わせる。最終年度に当たるH26年度は、ED-XRRシステムの高度化とFT-IRとの同時測定を行った。詳細を以下に記す。 (1) ED-XRR:光軸調整を自動化するためのプログラムを作成した。その結果、光軸調整にかかる時間は大幅に短縮された。固体表面としてシリコンウエハとITO導電性薄膜、液体試料として、水とエチレングリコールのX線反射率を測定したところ、理論通りの結果が得られた。さらにITOについては、10秒で膜厚が測れるだけのシグナルが得られることがわかった。一方、X線回折測定も行った。粉末試料として、塩化ナトリウム シリコン、グリシン、液体試料として水を測定したところ、理論通りの結果が得られた。 (2) ATR-FTIR:リゾチーム水溶液の塩添加による変性についての研究を行った。塩としてNaX(X=F-, Cl-, Br-, I-)を加えたところ、Br-, I-では2次構造が大きく変化することが観測された。 (3) ED-XRRとFT-IRの同時測定:グリシン水溶液中の水が蒸発する様子のX線回折とFT-IRを同時に時間分解能5分で追跡することに成功した。
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