研究課題/領域番号 |
24540446
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋本 武志 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70283588)
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研究分担者 |
寺田 暁彦 東京工業大学, 学内共同利用施設等, 講師 (00374215)
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キーワード | 火山 / リモートセンシング / 可視化 / 分光 |
研究概要 |
火山噴気に含まれる二酸化硫黄ガスを定量可視化するカメラ(SO2カメラ)の改良を行った.従来開発していたカメラシステムのレンズマウント及びレンズを変更し,きわめて安価なシステムを実現した.前年度,浅間山や十勝岳で行ったフィールド試験ではよい成果が得られなかったが,今年度は,より濃度の高い二酸化硫黄ガスがほぼ常時噴出している鹿児島県の桜島火山と熊本県の阿蘇火山においてテストを実施したところ,明瞭な結果を得ることができた.これにより,前年度の問題点は,噴気の透明度が低く紫外線が噴気前面で散乱されてしまっていたことと,光源となる背景紫外線の強度が足りなかったことが主原因であることが判明した.今後,同様の手法を噴気水蒸気に応用するにあたり,留意しなければならない点が明らかになった. 分校技術を利用して噴気水蒸気を隔測するための別の方法として,過去の研究にて開発した小型ラマンライダーを利用する方向性を追究した.研究代表者らは,これまで,ラマンライダーを用いて噴気中の水蒸気を定量することには成功していたが,噴気中には一般に細かい水滴となった液相の水も含まれており,この液相水の定量は実現していなかった.そこで,群馬県草津温泉の万代鉱噴気にて,噴気の直接採取による密度測定を行い,ラマンライダーによる水滴チャンネルの信号を校正することに初めて成功した.これにより,これまで不可能であるとされてきた噴気中のH2Oの定量隔測を実現することができた.この手法により,噴気による熱輸送の主たる担い手であるH2Oを,ガスの直接採取によらずに測定できる可能性が開かれたことで,火山からの放熱率観測に新たな展開が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題での当初目標である噴気水蒸気を定量可視化するカメラそのものの実現には,まだ至っていない.この主な理由は,透過性の高い噴気が常時観測できる適切なテストフィールドがなく,野外での実験が難しいことによっている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果によって,相対的に難易度の低い二酸化硫黄ガスで実際のフィールドテストの経験を積むことができたので,今後引き続き水蒸気可視化カメラの実現可能性を探りたい.また,噴気画像のPIV解析については,解析用の映像資料を収集することができたので,放熱率推定のための効率的な解析方法を引き続き検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度3月に観測旅費として執行したが,北海道大学の会計システム処理の手続き上,支払いが26年度4月になってしまったことが理由である. 上記の「次年度使用額」は,当初の計画通り25年度の研究に使用したものであり,すでに26年度4月中に支払い手続きされることが決まっている.従って,26年度の研究も当初の計画通りの予算にて実施する.
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