研究課題/領域番号 |
24540447
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉本 充宏 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20334287)
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研究分担者 |
西村 裕一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20208226)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 渡島大島 / 津波 / 火山 / 噴火 / 山体崩壊 / 火山灰 / 噴火年代 |
研究概要 |
火山災害としては国内最大級の被害をもたらした渡島大島火山1741年津波の発生原因は,古記録とその情報に基づく数値計算によって考えられてきたが,物的証拠に基づく検証は実はまったく行われていない.本研究では渡島大島火山1741年津波の発生原因を解明するため,以下の5つの項目,1.渡島大島島内の調査,2.北海道沿岸のテフラおよび津波堆積物の分布調査,3.テフラの同定,4.マグマの特徴の解明,5.津波堆積物の同定と津波特性の抽出,を平成24年度に実施予定であった.4以外の4つの項目については実施した.4については,調査時までに渡島大島での試料採取が調査時までに許可されなかったため,平成25年度に実施することとする. 野外調査(項目1および2)として,渡島大島島内の津波堆積物および噴火層序の調査を2回と奥尻島における津波堆積物およびテフラ調査1回を実施した.その結果,渡島大島島内には,1741年津波起源とされる堆積物の存在は確認できなかった.奥尻島においては,一カ所ではあったが1741年津波起源とされる堆積物が確認された.一方,噴火層序の調査としては,これまで過去1万年間に1741年と約760年前の2つの噴火しか確認されていなかったが,それ以前にさらに数回の噴火堆積物を確認した.土壌層の厚さから,おそらく2000~3000年前にも噴火活動があったと予想される.また,奥尻島では先行研究で1741年の火山灰と考えられている火山灰を確認し,現在EDS による火山ガラスの組成を分析しており,テフラの同定作業(項目3)を行っている.項目5については,奥尻島で採取された試料の粒度分析を行い,形状観察,構成物分析を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,平成24年度に予定していた以下の5つ実施の項目中4つを実施し,順調に遂行されている.研究項目:1.渡島大島島内の調査,2.北海道沿岸のテフラおよび津波堆積物の分布調査,3.テフラの同定,4.マグマの特徴の解明,5.津波堆積物の同定と津波特性の抽出. 野外調査では,渡島大島島内での新たな噴火層序の発見や島外での津波堆積物やテフラを確認した.また,それら堆積物の各種分析を開始した.一方,項目4は,調査時までに渡島大島での試料採取が調査時までに許可されなかったため,試料の採取が出来なかったため実施できていない.平成25年度は許可申請を早期に行うことにより問題は解決できている.これらをふまえた平成25年度の調査計画を計画しており,おおむね順調に遂行していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は前年度の結果に基づき,渡島大島島内の再調査および渡島小島の調査を2回行う.渡島大島東南東に位置する渡島小島は渡島大島から最も近い島であり,津波堆積物が到達した可能性が高い.渡島小島も無人島であるため,渡島大島に渡島した後に渡島小島を経由して,津波調査を行う.また,北海道南西部や東北地方の日本海側および佐渡島において,古記録により津波の記録が残っている地点での津波堆積物の分布調査を行う.その後範囲を拡大し,津波の分布域を明らかにする.前年度に引き続き,層序対比のカギとなるテフラの同定作業を行う.渡島大島1741年噴火推移の解明するために,渡島大島島内で採取した噴火堆積物の蛍光X線分析装置 (XRF) による全岩化学組成分析を行い,渡島大島の岩石の特徴を明らかにする.地質調査,火山灰調査,マグマの特徴から1741年噴火推移および山体崩壊の発生要因がマグマの貫入によるものかどうかを明らかにする.前年度に引き続き津波堆積物と考えられるサンプルの粒度分析,構成物分析,鉱物分析,微化石分析を行い,津波堆積物の同定作業を行う.さらにこれらの結果を踏まえて津波堆積物の分布を確定する. 平成26年度には,各種分析によって同定した津波堆積物と火山灰から層序を確定し,津波の発生要因が火山体の崩壊によるものか,地震によるものか検討する.上記の研究を総合して,渡島大島で起こりうる火山現象を網羅し,それに伴う津波の発生過程を検討する.そして渡島大島における噴火と津波の予測シナリオを作成する.上記の研究成果について国内外の関連学会で公表し,論文を関連雑誌に投稿する.また,渡島大島を取り巻く自治体ならびに住民に津波や火山活動を正確に理解してもらうための説明会を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は渡島大島調査を2回予定していたが,許可申請および天候の影響で1回しか実施できなかった.そのため,残余金が発生している.平成25年度は当初渡島大島調査を1回予定していたが,2回実施予定であり,平成24年度の残余金をその調査費に当てる予定である. 平成25年度の研究費の使用計画としては,渡島大島調査を2回,奥尻島調査1回,北海道南西部日本海側調査1回を予定しており,これらの調査旅費として500千円を見込んでいる.また,調査時の漁船借り上げ料として400千円(2往復)を見込んでいる. また,人件費としては,野外調査では調査補助者100千円,室内実験補助者240千円を見込んでいる.物品費として実験消耗品を50千円,そのほか放射性炭素年代測定300千円,研究発表のための旅費として200千円を計上する.
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