火山災害としては国内最大級の被害をもたらした渡島大島火山1741年津波の発生原因は,古記録とその情報に基づく数値計算によって考えられてきたが,物的証拠に基づく検証は実はまったく行われていない.本研究では渡島大島火山1741年津波の発生原因を解明するため,渡島大島島内および北海道沿岸のテフラおよび津波堆積物の分布調査,それらで検出したテフラの同定,渡島大島のマグマの特徴の解明の課題を実施した. 野外調査の結果,渡島大島島内には,1741年津波起源とされる堆積物の存在は確認できなかった.奥尻島においては,一カ所ではあったが1741年津波起源とされる堆積物が確認された.これら以外には、明確に渡島大島起源と確定できる津波堆積物は確認できていない.そのため,津波堆積物の特徴の抽出には至っていない. 噴火層序は,これまで過去1万年間に1741年と約760年前の2つの噴火しか確認されていなかったが,島内では複数回の噴火堆積物を確認した.テフラの同定及び年代測定から,最近3000年間に4回のマグマ噴火を行っていたことが明らかとなった.またこれらの噴火は,多様な噴火様式を示す.1741年噴火では,マグマ噴火に先立ち、水蒸気噴火ないしマグマ水蒸気噴火を発見し,これらが山体崩壊に対比される可能性が高いことを明らかにした.
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