防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)のうち東北地方中部のデータを用いて地震波干渉法解析を行った.2007年から2011年半ばまでの期間で,周期1-8秒の脈動帯域において観測点間の相互相関関数や単独観測点の自己相関関数を計算し,それらのコーダ部分を用いてストレッチング法により地震波速度変化を計算した.さらに地震波速度変化の時系列から,2008年岩手宮城内陸地震,2011年東北地方太平洋沖地震に伴うステップ的変化,その後の余効変化,年周成分の分離に成功した.これらの成果はHobiger et al. (2014)として出版された. 観測された地震波速度の年周変化は,秋に最大になり,春先に最小になる傾向がある.年周変化の要因としては,気温,降水量などの気象要素,地下水位などの水文学的な要素との関連がこれまでに指摘されてきた.そこで本研究でも,地震波速度変化と気温,降水量,地下水位の観測データとの比較を行った.その結果,観測された地震波速度変化の傾向を説明しうる候補として地下水位の変化が考えられた.つまり,この地域では春先の融雪により地下水位が上昇し,それが地震波速度低下を引き起こしている可能性があることが分かった. 昨年度までの成果である2011年東北地方太平洋沖地震に伴う東北日本の浅部地盤構造の時間変化が,Nakahara(2015)として出版された. 地震波干渉法の手法自体の理解を深めるため,理論的側面についても考察した.その結果,グリーン関数の相反性を利用すると震源と観測点を入れ替えることができ,地震波干渉法の問題と震源イメージングの問題が等価になることを明らかにした.これにより,地震波干渉法の知見を利用して,震源イメージングの空間分解能についての解析的表現を得ることができた.この成果は,Nakahara and Haney(2015)として出版された.
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